とんだマイケル・ファスベンダー祭であった。
そしてヘンテコな映画だった。
でもこのヘンテコな感じがツボに来て、『プロメテウス』より面白かった。
巷の評判がよろしくないので一抹の不安があったのだけど、私はこの作品嫌いじゃない。
ただ、巷の評判が微妙になるのもわかる気がする。
物語は結構無理矢理感あるっていうか、これってプロメテウス当初からこういう構想だったのかなーと疑問を覚える部分もある。というかプロメテウスで広げた大風呂敷を一瞬にして「やっぱり、あれはなしなし!」って雑に片付けられた感って言うか。
まあ、そういうところも含めて愛しいけどね。
そもそもプロメテウスの時点で頭打ちっぽい雰囲気あったから、こうする以外になかったのだろうという生暖かい気分。
とにかくチェストバスターが史上最高に神々しく可愛かった~。
ネタばれ
最初に死んだキャプテンがジェームズ・フランコってウケ狙いか?
ジェームズ・フランコの立ち位置がどんどん変なことになっている。
で、いきなりキャプテンが悲惨に死ぬとか、重たい展開をみせる。その死に様のインパクトで誰も休眠したくなくなるという伏線なんだね。
エネルギーをチャージする方法とかちょっとディテール面白かった。
時系列的には『エイリアン』より前の話なのだが、宇宙船内部の機能は『エイリアン』の時代よりハイテクにみえる。
とにかく、なんだか惑星に到着するまでが長ったらしいのね〜。これは相変わらず『エイリアン』からの伝統ね〜。『エイリアン』はあの長ったらしい感じは効果的でもあったんだけど…。
船長代理の人がやけに宗教観の強い人って設定だったけど、何か意味あったのか? ものすごく安易な決断でこの惨事。未知の惑星になんの防護服も着けずに探索に出るクルー。(ちなみに、ここ、未知の惑星って感じがまったくない。普通に地球でロケしたなって感じ。)
案の定なんかわからん菌に感染。で、この菌の威力すごいな。エイリアンより破壊力あるよ。パーフェクトなバイオ兵器。
人間の創世に関わる謎を秘めたエンジニアが一瞬にして全滅。大体創造主を訪ねるなんて風呂敷を広げると破綻する法則。
で、いつもならあんなに感染とか神経質なのに、あきらかにやばそうなクルーをあっと言う間に着陸船に入れてしまう。『プロメテウス』の時だってもっと慎重だったよ〜。
さらに、自分も血を浴びて感染している恐れがあるくせに、しれーっと逃げて、もう他のクルーを医療室に閉じ込めるあたりは呆れかえる。
で、コヴェナント号に残ったこの女の相方が、彼女の通信を聞いて動揺し、宇宙船の危険を顧みず、助けに行こうと無謀な行動をしようとする。最初は彼の行動に抵抗していたクルーも最後は何故か協力的になる謎。
とにかく随所に脚本の雑さを感じる。
なんやかんやで、お馴染みのエイリアン登場でやっとエイリアンらしい展開というか、エイリアンのやっつけ方を含めてなんやかんやでこれまでのシリーズのパターンを踏襲しているだけだけど、このあたりは普通に面白い。
そういえば、私はつねづね『ターミネーター』シリーズは何故毎度ロボット1対1の戦いにこだわるのだろうと思っていたけど、それと同じような思いを『エイリアン』シリーズにも抱いていて、なんで、いつもアンドロイドは一作に一体しか出て来ないのだろうと思っていたが、今回は2体出てきて、僅かにそのワンパターンを打破してくれたのが嬉しかった。
でも、ただアンドロイドが入れ替わるというオチを描きたいためだけの設定なのはいただけないかなー。創造の能力があるアンドロイドと、創造の能力を持たないアンドロイドの対決ってところはすごくツボったんだけど。
そういえば、デヴィッドがウォルターにキスする妙なシーンがあるけど、あれはアンドロイドの自己愛を表現してるのかねー。
後から作られたアンドロイド、ウォルターの方がデヴィッドより機能が勝っていて有利っぽかったのに、なんでデヴィッドに負けたんだろう。ウォルターは天使の主従になることを拒んでわざと負けたってことか? しかし、なんか主人公の女に惚れてるっぽいことを指摘されてたけど、そのあたりはどうなったんだ? とウォルターの存在が割と中途半端に投げ捨てられた気がする。
ただ、このあたりを掘り下げるとなんか『エイリアン』というより全然別の映画って感じがする。こういうのは『ブレードランナー』の方でやっていただきたような。
シャワーしながらエッチしているカップルがエイリアンに襲われるという、ここだけ突出して凡庸なスラッシャームービーみたい。詩の引用とかめっちゃすかして高尚な志っぽいのに、このB級感。
そーいやー、キャサリン・ウォーターストンって予告の段階から思ってたけど、ときどき、『ゴースト/ニューヨークの幻』の頃のデミ・ムーアに見えるんだなー。
前回の主役であるエリザベス・ショウの扱いは惨かったな〜。『エイリアン3』のニュートとヒックス伍長の扱いよりもっと酷いって言うか、この風呂敷のたたみ方は『バイオハザード』と同じというか、リドリー・スコットがそれやったらあかんやろーって気分。
プロメテウスでは人類創世なんてばりばり大風呂敷広げたのに、結局エイリアンの誕生は一介のアンドロイドが神になりたがった結果なんて、またまた、壮大に広げておきながら、箱庭に戻るような展開。
監督はファスペンダーがお気に入りなのか、シリーズの主役をはる勢いだもんね。
まだ続編作る気があるようだけど、興行成績悪いから果たして次に繋がるかね〜。