※事件の内容に触れるのである意味ネタバレになります。
2013年に発覚したオハイオ州クリーブランドで起こった監禁事件を元に描いたテレビ映画です。
これだけ直近の事件を被害者をはじめすべて実名で語られるというのが、なかなか日本では考えられない話。
日本でも2015年に『奇跡体験!アンビリバボー』でとりあげられています。
http://www.fujitv.co.jp/unb/contents/150507_1.html
この映画で中心となるのが最初に誘拐されたミシェル・ナイト。彼女は当時の経験を書いた本を発表されているそうです。
副題がB級感を醸し出していますが、作りは真面目です。
実際に女性が性的暴行を受けるシーンもありますが、そこはオブラートに包みすぎず、尚かつゲスにならないぎりぎりラインで描いていると言えます。流れは一応実際の事件に沿ったものですが、事件についていろいろ調べると、やはり実際の事件とは異なる部分も多く、また映画内ではわからなかった疑問点などは、実際の事件の記録で補完する感じでしょうか。
私はこの映画を観ていて、お風呂や着替え、排泄はどうしてるんだろう(缶みたいなものはあったけど、犯人が片付けているのか?)、とか、あんな無茶な流産で体は大丈夫なのだろうかとか、ちょっとディテールが気になりました。
ここの事件のまとめ記事によると
https://matome.naver.jp/odai/2136829412583131501
http://blog.ameba.jp/ucs/entry/srventryinsertinput.do
http://www.afpbb.com/articles/-/3002764
ミシェル・ナイトに関しては、長年の暴行の結果顔の骨格が歪み、聴覚障害があるとありますが、テレビ映画ではそのような部分までは描かれていません。
しかし監禁における悲惨さを描くならばそこも描くべきでは?と思います。
さらにミシェルは5回堕胎されられたりと、常に裸の状態でシーツを一枚だけ与えられていたとか、3人とも長らく地下に監禁されていたとか、映画よりもやっぱり状況はもっと悲惨だったように思います。
また、ミシェルの息子は別の男から強姦されて生まれたという言う記述もありますが、強姦されたり監禁されたりつくづく男運が悪いですね。
ミシェルには双子の兄弟がいてミシェル発見後再会したとの記述もあり、映画のように彼女がまったく孤独で見放された存在だった訳でもないようです。
母親と折り合いが悪かったのは事実としても映画ではミシェルの置かれている立場をより悪く強調しているようです。
高卒で職を探すことも難しい社会的底辺にいるシングルマザーが陥った落とし穴。それが彼女を強くもたくましくもするきっかけになったみたいな前向きなとらえ方をした物語ですが、事実強くならざるを得なかったとは思うものの、許し難い出来事であることに変わりはないですね。
息子を支えに生きてきた彼女ですが、実際に息子の幸せを願って会わないと言う決断をするのは実に痛ましいです。
出来ればいつかこの親子が再開出来る時がくるといいのですが。
犯人のアリエル・カストロもまた、スパニッシュ系で元スクールバスの運転手という貧困層ですが、4人の子供を持つ父親であり、離婚し、養育権を持つ妻に対してDVを働いていたということで、その妻は暴行が原因と思われる脳腫瘍で早々に亡くなられているようです。
映画でも、時々子供が尋ねてきたり、近所の仲間とギターを演奏したり、一見悪い人物に見えないところが恐ろしいというか、知り合いや友人の父親だったら誰でも油断しちゃうというか、そういう人が監禁事件を起こすなんて本当に恐ろしいです。
しかも自分が監禁した女性の捜索に対してボランティア活動までしてたというのですから、一見良い人の仮面をかぶった人間ほど質の悪いものはありません。
それにしても、なんだかんだ勢い3人も監禁しちゃうんだから、衝動的で後先考えない人物だったんでしょうね。で、気に入った女性には子供を産ませ、気に入らない女性は堕胎させる。処理に困って本人に墓穴を掘らせる。最後はうっかり鍵を開けたまま外出して事件発覚。その上で自殺。自分勝手にもほどがある。
この映画では若干ミシェルに説得され、自首する為にわざと鍵を開けはなったようにもみえますが、その後の彼の発言を見ても、反省している様子もないし、やはりただうっかり鍵を開けて外出してしまったようですね。
監禁した女性に生ませた娘を溺愛してましたが、娘が成長したら性的虐待に走るんじゃないかとはらはらしました。まあ、4人の子供に対して性的虐待をしていたという記述はないようなので、それは心配しなくても大丈夫だったのでしょうかね。
この事件は警察の杜撰さも問題視されていたようですが、犯人をあっさり自殺させてしまうあたりも実に杜撰ですね。
とにかく、彼女たちはこのような過酷な状況でも生き抜いたこと、またそれは決して彼女たちの罪ではなく、いたずらに好奇な目にさらされるものではなく、堂々とこうした経験があったことを語り、また当たり前の暮らしを取り戻すこと、そのように社会が受け入れる状況にあることがアメリカってすごいなーと思います。