ここ数年に観たゾンビ映画の中では出色の出来!
久しぶりに話にのめりこんで手に汗握ったよ。
高速電車の中で起こるパンデミックという意味では、逃げ場のない感半端なく、設定だけで勝ち。勿論、118分をもたせるだけのアイディアも詰め込まれていて、実に面白く出来ている。
そして僅かな描写で電車内の主要な人物を瞬時に印象づけるのが見事!
それぞれがキャラ立ちしていて、それぞれの運命が自ずと気にかかるように出来ている。そういう意味では魅力的な人物配置。
特に妊娠した妻を連れているサンファは男気溢れる素晴らしいキャラクター。
高校野球チームのカップルも微笑ましく、運転手の人の良さとか、憎めないトレブルメーカーのホームレスとか、老いた姉妹とか、実にいい感じに登場人物が配置されている。
加えて、高速バス会社の常務であるヨンソクの憎々しさも素晴らしく実に正しい悪役のあり方。
勿論、完璧と言う訳ではなく、やや泣かせどころを作りすぎて、ウェットになり過ぎかなーとか、いくつか気になる点もあるのだが、総じてスリルの連続にドーパミンが放出して、なんともいえないスカッとした気分を味合わせてくれる。
襲ってくるゾンビ描写は迫力あるし、私はのろのろゾンビの方が好きだか、この映画には圧倒された。
ネタばれ
面白かったことは間違いないが幾つか気になった点もある。
例えば、ラストで少女が歌うシーンだが、危険なゾンビが潜んでいるかもしれない状況で自分の位置を知らしめるようなリスクを犯すだろうか?と言う点だ。
勿論オチとしては素晴らしく、良い落とし方だと思うので、その疑問には片目をつぶってもあまりあるとは思うのだけど、少しだけ気になった。
ホームレスが最後に自己犠牲に走るのもちょっと唐突。もう少し彼がそのような変化に至る過程が欲しかった。
姉妹の姉の行動も、自分より他人を優先した結果死んだのか、状況に絶望して死んだのかちょっと判別しづらかった。少なくとも助かろうと思えば助かりそうな状況だったのに、何故死を選んだのかわかるようなわからんような。
高校野球チームのカップルもあの危険な状況で背後のドアを閉めないことが理解出来ない。無我夢中過ぎたと解釈出来るけど、心情としては「ドアは閉めてくれ!」と思うところ。
泣かせるシーンもちょっとひっぱり過ぎかなーと思うところはある。
サンファはいいキャラクターだっただけに、確実に死ぬとは思っていたし、その死は痛いものだが、噛まれてからなかなか変化しないし、ゾンビの攻撃がそこだけちょっともたもたして見えて、少し制作側のさじ加減を感じて冷めてしまう部分がある。
父親が死ぬ場面は一歩間違えると臭い演出というか、『アルマゲドン』を思い出す。
でも、娘の悲痛な叫びは胸にくるし、一応泣いたよ。ああ、泣きました!
まあ、こんな感じでところどころ冗長な演出が少し気になるというか、もう少し刈り込めばさらに完成度があがるなーという気がした。
ゾンビに変化する速度はまちまちというか、最初に感染した少女は発病するまでに時間がかかったけど、乗務員とか、途中襲われた人たちは割と瞬時だったなーっと。
あと、サンファがゾンビになってもう一度登場とかあるかなーっと思ったり。
父親と娘の関係はよく、自分と娘だけ助かろうと画策する父親を「お父さんは自分のことばかり。だからお母さんは出て行った」と指摘する娘の言葉は刺さる。
自分のことしか考えなかった父親が事件を通して変わっていく様、そもそも事件の発端は自分にあると悟る部分などは、よく出来ていた。
高速電車の中だけでどうやってもたせるんだろうと思ったが、途中駅で下車するあたりとか、電車の乗り換えとか、ポイントポイント飽きさせない作りになっていて感心する。
特にトンネルの暗闇によって動きが止まるゾンビというアイディアはスリリングでよかった。