盆休みの最後を飾るべく、3Dで観賞しました。
サム・ライミ版のスパイダーマンシリーズが良すぎて、なかなかあれを超えるのは難しいというか、アメイジングシリーズのスパイダーマンを演じるアンドリュー・ガーフィールドがイケメン過ぎて、おまけにいまいちトビー・マグワイアに比べるとキャラとしての魅力が弱い。なんつーか、好感を覚えないのね。
でも『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』ではじめてトム・ホランドを観た時、彼がスパイダーマンとなるシリーズは行ける!という予感がした。
というくらい、トム・ホランドがイケメン過ぎず、そしてとても好感を覚える若者だったから。
トビー・マグワイアのスパイダーマンは意外性とキャラ立ちが素晴らしかったが、トム・ホランドもトビーとはまた違った打ち出し方で、いい感じにキャラ立ちしている。
アイアンマンに抜擢され、大きな作戦に参加する若者のはしゃぎっぷりが動画撮影という今時感とマッチして、実に楽しい。このあたりの演出もPOV好きとしては面白かった。
それにトビー同様、イケテナイ側に所属しているが、トビーより内向的なイメージがなく、あくまでライトな印象だ。そのあたりのキャラの打ち出し方の違いもよかった。
小ネタもくすりくすりと笑えるし実に楽しい。
この映画はこれまでのスパイダーマンで感じる疑問に関してかなりリアル視点で応えている。
例えば、都会でなら彼の能力はフル活用出来るが、建物がろくにない郊外になると途端に彼の能力はさほど活かされない。逆に不便とか。
また、高校生があれほど精巧なスーツを作るのは難しいだろうという疑問はトニー・スタークからの支給であるという設定で納得。
また、本来スパイダーマンはスパイダーセンスによって犯罪を察知するという設定だが(このスパイダーセンスに苦痛が伴う為、彼は好むと好まざるとに関わらず人助けにかり出されることになる)、この映画では相棒の存在によってよりリアルに犯罪現場に直行出来る。
この相棒がどっちかと言えばヒエラルキーの下層タイプで、でも、非常にいい味を出している。
スーツの万能性とか、相棒とか、このあたりは従来のスパイダーマンとはイメージが違うので賛否はあるかもしれないが、スーツに仕掛けられたいろいろな機能を試みるあたりは面白かったので、まあ、これはこれでありかなーなどと私は思う。いや、確かにアイアンマンと被ってる感は否めないけど。
それと、この映画を観る限り、スパイダーマンは壁をよじ登る能力しかないように見えるが、彼が通常の人間よりもかなり高い身体能力を持っていることは、初心者にも少しわかりやすく説明があってもいいかなーと思う。
彼がかなりの怪力の持ち主であることや、高い治癒力、そして外部からの衝撃に対する耐性、恐ろしいほどの瞬発力など、描写としてはあるのだが、説明がないのでただご都合主義的に助かっているようにも見える。というか、すごいのは彼の身体能力ではなくスパイダーネットの万能性にあるようにも見える。
まあ、スパイダーマンファンにとっては今更感で説明不要な部分なんでしょうが。
敵役にマイケル・キートンを起用したのもいい感じ。彼は達者な演技というか、非常に実力ある俳優だなーとしみじみ思った。
まるで『バードマン』のパロディみたいな役柄だけど(それを意識して配役した感じ)、この敵の背景なども非常に説得力を覚える。
私はもともと『アイアンマン』に好感をもてなくて、『キャプテンアメリカ』よりもアメリカらしいヒーローと思っている。武器商人として財をなし、その財力を行使して独善的なヒーロー行為を行う様はまんまアメリカっぽい気がする。
そんなアイアンマンやアベンジャーズから派生した弱者のしわ寄せが、こういうった形でしっぺ返しとなるあたりはどこかしら因果応報とも言える。
そんな好感のもてないアイアンマンだが、スパイダーマンの父親的な存在として現れ、危機に陥ると助けにくる様はなんだか頼もしく、スパイダーマンが危機に陥る度にアイアンマンが助けにこないかとさえ思ってしまった。
なんだかんだ言ってトニー・スタークがスーツを着て登場する姿はすごく格好よく見えるし、少年との対比として非常に大人に感じる。スパイダーマンとの掛け合いも実際面白いしね。
スパイダーマンを厳しく叱る場面などは怖くて、まさに父性を覚える。
とりあえず、サム・ライミ版との棲み分けが功を奏しているし、アメイジングよりずっと期待出来るので、今後も楽しみだ。
※そういえばホームカミングって言うアメリカの学校行事を始めて知った。プロムくらいしか知らなかったから、全然ぴんとこなかった。
ネタばれ
マイケル・キートンがヒロインリズの父親として登場した時はやられた感を覚えた。
リズの家がやたら金持ちだったのはそういうことかと。
この試練によってスパイダーマンがスタークに認められてアベンジャーズの一員となることより、もっと自分の正義を貫く本質に気づくあたりの展開はよい。
ただ、ヒロインが記号的というか、かなりなおざりに描かれているのはこの映画の欠点とも言える。
何度すっぽかされてもピーターに好意を抱き続けるのもよくわからんし、いざ別れになっても案外たんぱく。自分を恋するちょっとかわいい男の子だから相手をしてただけなのかなーというレベルで、それはピーターにしても彼女との別離を割とさらりと流しているあたりは、本気で好きというよりはやっぱり憧れレベルだったのかなーという感じでふたりの関係性はかなり薄い。
なんで、その程度の間柄かという感じで、選択によって失うものが比較的軽く感じられる。