※ネタばれ気味なんで未見の方はお気をつけください。

※それにしても最近何を持ってネタばれとするのかよくわからなくなってきましたね。ミステリーで犯人を明かさないレベルだったらわかるんですけど。

 

アンドリュー・ガーフィールドが怖い。

アンドリューって笑顔がちょっとアンソニー・パーキンスに似てない?

あのにやけ顔が時折『サイコ』のノーマン・ベイツと被るのだよ。秘められた狂気って言うのかな。

まあ、ある種の宗教的狂気のような話しなんだけど、それ以前に、妻であるドロシーのロマンスからして終始怖い。

 

一目惚れの出会いからもただ突っ立ってずっとにやにやしながら見つめる男なんて、女の立場からしたら薄気味悪くてしょうがない。

献血した翌日にその血をまた返せとか言い出す男なんてやばい奴にしか思えないし。

で、挙げ句突然のキスをして「キスして欲しいかと思って」なんて言い出す男も最低じゃないかと。「キスをしたくなってつい」とか言うならまだしもね。

でも、こんな風に終始にやにやしてる主人公の行動がいちいち怖いのだけど、不思議とドロシーはそんな彼を受け入れ、ちょっといいロマンスみたいなお話になっているところがまた不可解だったりする。

メル・ギブソンはこれが素敵なロマンスと本気で思ってる?

それとも事実ありのままに描いた結果こうなったの?

 

軍隊での訓練も、上官の言葉にまたいちいちにやにや。ある意味何かを超えちゃった存在っていうか、そうじゃなければあの空気で良心的兵役拒否者の姿勢を貫けないのかもしれない。

というか、第二次世界大戦中の日本だったら宗教的理由で銃を持たないなんて絶対許されないだろうなーと思うのだが、そこはやっぱりアメリカ的で面白い。

 

信念を貫くこと自体が実は狂気なのかもしれないのだが、私は信念を貫く人間につい感動してしまう傾向があるし、軍法会議前にドロシーがデズモンドに面会に行くシーンなどはやっぱり胸に来る者があるのだが、やはり信念と言うのは紙一重的なものがあってなんとも複雑だ。

 

それでも戦争という狂気の中で、殺さないという姿勢を徹底的に貫くというのはそれはそれでやっぱりすごいことだなーと言う気はする。

すごいことだなーとは思うのだが、途中からもはや人を助ける快感に酔ってしまっている主人公というか、極限の状態の中で麻薬のようにハイになってしまっている『ハート・ロッカー』の主人公と相通ずるものを感じる。

役目を終えて天国にも上るような演出も非常に象徴的。

個人的には『バンド・オブ・ブラザース』を観て以来、衛生兵にこがれる傾向にある。衛生兵はやっぱり兵士にとって戦場の天使と言う気がする。

 

ハクソー・リッジと呼ばれる「前田高地」における沖縄戦は、どう考えてもアメリカ側が有利というか、戦闘力で完全に負けている気がするし、武装でもアメリカ軍は鉄のヘルメットなのに、日本軍は普通に軍帽なのだもの、勝てる気がしない。きっと武器も全然足りていなかっただろうし、ここまでアメリカ兵をてこずらせたとするならば驚きだ。

もっとも圧倒的不利でありながら、もはや命を省みずに特攻する様はやっぱり脅威というか、これまたデズモンドとは違う意味での信念というか狂気だなーと思う。

こうした接近戦での戦場の様は『プライベートライアン』以来の凄まじさと言うか、死体のグロテスクなまでの描写は『プライベートライアン』以上とも言える。

 

そうそうエージェント・スミス父ちゃんが息子を助ける為に軍法会議に現れるシーンもそこはかとない感動がある。

DVの父親に育てられながらも、デズモンドがDVにならなかったのはやっぱり信仰心のたまものなのか?

ところで、先に戦場に行ったお兄さんはどうしたんだろう?

 

グローヴァー大尉演じるサム・ワーシントンがいい感じだった。

アンドリュー・ガーフィールドは『沈黙』もそうだけど、このまま伝道師的俳優になっていくのかな。