若干ネタばれしています。

『ブリジット・ジョーンズの日記』は、現代女性の姿を描きながら、実に保守的なおとぎ話だなーと思う。まあ、ベースが『高慢と偏見』だからしょうがないのかなー。
駄目女的に描かれるブリジットだが、意外に駄目じゃないというか、ドジだけど意外にやり手だったりするし、なんだかんだいい男ふたりに言い寄られ続ける。そして誠実でお金持ちのダーシーに理屈抜きで惚れられ続けている。
最初の作品はそんなブリジットのここ一番に見せるパワーによって愛をつかむというあたりがロマンティックに描かれていて、まあ、ラブコメとしてそれなりに楽しめるものではあった。
しかし、弁護士のお金持ちをゲットというあたりが実に夢物語っぽい。

続いて次作では、そんな夢物語に、育ちの違いなど、価値観の相違が描かれるあたりはちょっと面白かったのだが、その問題と殆ど向き合うことなく、どたばたの内にまるっと結婚してめでたしめでたし的なまとめ方をされて、なんだかんだ言っても結婚すりゃーすべての問題を放り投げてめでたしめでたしなのかーと釈然としない気持ちになったものだが。

そして、今作、てっきりマークと結婚したのかと思いきや、相変わらずの寂しいおひとり生活。しかし、30代の頃のひたすら寂しく惨めさが漂うブリジットではなく、それなりに仕事で敏腕ぶりを発揮しているのだから、それはそれでまあ、立派。そういう意味では「オール・バイ・マイセルフ」を熱唱していた最初のブリジットの方が悲壮感はあった。
そんなこんなで結婚めでたしめでたしのおとぎ話から一歩先を行くのかなーと思いきや、仕事を優先するマーク、それを寂しく思うブリジットのすれ違いから結婚に至らぬという、まだ、そのレベルの話なんだーという感じ。
で、ブリジットの妊娠騒動で、またしても真実の愛を確認するという感じで、結婚、ゴールイン、めでたしめでたしと、結局おとぎ話からまったく進歩がないままなのだ。
女は仕事を失っても、子供を産み、結婚すりゃー幸せなのよという保守的な価値観は相変わらずだ。
40を過ぎたブリジットが、社会的成功を収めているふたりの男性から都合よく愛される展開もおとぎ話度アップで、さすがに観ていて無理があるというかおとぎ話に酔えないというか、何もかもが主人公に都合よく展開すればするほど、観ているこっちは嘘くささのあまりに辛く悲しい気持ちになってくる。
何よりもジャックはいい人過ぎるだろう。
こうなるとブリジットはもはや特殊過ぎて、40を過ぎた女性たちとリアルな共感を得ることは難しいのではないだろうか。

コリン・ファースは老いても相変わらず素敵であったが、しかしこの映画によく三本もつきあったなー。

一時顔の変貌で心配されていたレニー・ゼルウィガーはまあ、それなりにブリジットを取り戻してはいたが、やっぱりどこか不自然さが否めなかったな。