傑作! これは傑作!
観る前から傑作の予感はあったんけど、思った通りの傑作!
いやー、久しぶりに文句なく傑作と言える作品を観た気がする。
イギリスのEU離脱問題で騒がれる昨今、移民問題などものすごーくタイムリーな作品だなーと思ったら、撮影期間って二ヶ月弱なのね。
それは時事ネタも盛り込めるというもの。
まさにドイツの今を垣間見た感じ。ドイツ語の語感もたまりません。
ティムール・ヴェルメシュの原作は2012年に発表されたものですが、映画はさらに現在の動きを上手にとりこんでいます。
本家ドイツがこうした喜劇を作るというのが素晴らしいというか、ドイツがこんなに喜劇のレベルが高いとは思いがけなかったですよ。
笑えるけど、同時に危険性もしっかり描いていて、今の時代にしっかり警鐘を鳴らす作品ですね。
オリヴァー・マスッチのヒトラー演技も素晴らしかったです。
道化として扱われようとも、首尾一貫してぶれない底知れぬ怖さを秘めたヒトラーを見事に演じていました。
POVっぽい撮影も効果的で、市民と対話するシーンはアドリブだったようですが、そのあたりの臨場感もよく出来ていました。
ネタばれ
いや、さりげなく『ヒトラー ~最期の12日間~』の例のシーンをぶっこんでくる所が最高でしたね!
YouTubeで何かとネタにされるシーンですが、本家ドイツがやるのはたまらんです。
しかしこの社会状況が現代に蘇ったヒトラーに「まさに好機」と言わせてしまう不気味さといい、笑えるけど怖い風刺映画でした。
現代人がその恐ろしさを忘れ、無邪気に写真を撮ったり、ハイルヒトラーのポーズをし、完全に滑稽なものとして油断させられる反面、自分が不快であれば容赦なく犬を撃ち殺す冷淡さを秘めたヒトラーにはっとさせられます。
極右も極左もどちらも人間の心にあるものだから、ヒトラーをただ悪魔と描くのではなく、人がその言葉に思わず傾倒してしまう事実をよく心得るべきでしょうね。