この映画でモリコーネがアカデミー作曲賞を初めて受賞というのはなんだか納得いかなかったですね。
いや、別に悪くはないんですが、彼は過去にもっといい仕事をいっぱいしてたのに、何故よりによってこれなんでしょう? ある種これまでの実績や功労賞的な意味合いだったんですかね。
それにしてもあの曲は、私の中ではどうしてもエクソシスト2なんで違和感がありました。

おまけにタラちゃんらしい前振りの長いこと長いこと。ちょっと心が折れかけました。
ここをぐっと我慢してこそ中盤以降の怒濤の展開とは思うんですけどね。

って、不満ありげですが、私は前作の『ジャンゴ』より好きです。
特にサミュエル・L・ジャクソンのキャラは私が『ジャンゴ』で感じた違和感に対するアンサーというかフォローのようにも思えますね。

あと、ワイドスクリーンで映し出される冬景色は良かったですね。
『戦火の馬』の時も思ったけど、これこそ映画館で観る醍醐味だなーと思います。

久しぶりに(8年ぶり?)カート・ラッセルです。
吹雪の中の疑心暗鬼というところがまんま物体Xです。
音楽もモリコーネなんで余計にそれっぽく感じます。というか狙ってますでしょう。

ジェニファー・ジェイソン・リー助演女優賞ノミネート納得の演技です。
本当にとことん不快な女性を見事に演じておりました。

ウォルトン・ゴギンズの保安官が良かったですね。
最初は薄い存在だったのにどんどん主役ばりの存在感を発揮していきます。

サミュエル・L・ジャクソンも相変わらず間違いない演技というか、将軍を挑発する為に彼の息子の話を嬉々として語る場面は生き生きしています。
このあたりの緊張感ある演出はさすがのタラちゃんです。

ティム・ロスクリストス・ヴァルツ生き写しというか、はじめてヴァルツをイングロで観た時、ティム・ロスだと思っていた節もあるので、逆もまた然りでしょう。おまけにタラちゃんの演出によるものなのか、今回は演じ方もそっくりに感じられました。
いつかこのふたりのキャラ被りまくり共演を観てみたい気もいたします。

将軍演じるブルース・ダーンはいいですね。こういう老人素敵です。

寒そうなシーンが続く中、映画館も若干寒かったんで、かなり冷え冷えした気分を味わいましたよ。

ネタばれ
登場人物は皆不快なんだけど、彼らなりの道義があって、正しい部分もあるけど間違ってもいるというあたりが良いですね。
人種も年齢も性差も関係なく、誰もが被害者であり加害者でもある状況で殺し合うというのが、ある種の人間世界の縮図にも思えます。

ジャンゴではジャンゴがディカプリオ一族にする報復が爽快というよりやり過ぎ感を覚えるのに対して、サミュエル・L・ジャクソンが南軍を憎むあまりに北軍捕虜もろとも焼き殺したり、リンカーンの偽手紙に皮肉を感じさせるあたりは、ジャンゴもひっくるめてそれらが肯定されるものではないことを感じさせてくれます。
それはカート・ラッセルが賞金首を自ら殺さないというポリシーにも通じるものがあるのです。

対立していた保安官とサミュエルの間に奇妙な同志愛のようなものが芽生えるあたりが良かったです。