ジェイク・ジレンホールがげっそりした顔であの大きな目をギョロギョロさせ、時折、病的にニヤリと笑う演技が怖い。
彼は盗んだフェンスを買い取りはするが、盗人は正式に雇いたくないという社会の矛盾の底辺にいる。
そんな中、人の破滅の瞬間に居合わせる死に神のような男としてサクセスしていく。
いや、このしたたかでたくましい嫌な男がかなりキャラ立ちしていてなかなか秀逸。
一体、彼にどんな過去があったのか。
明らかに異常な男であるが、クライマックスはかなり緊張したし、気がつけば彼の作戦が完結することを願い、感情移入している自分がいる。
こんなモラルに反した男に一瞬でも感情移入するのはどうかと思うが、人間の暗部をむきだしに描ききったこの作品は不思議な清々しさある。
こんな男が身近にいたら絶対嫌だし、関わりたくもないが、そんな嫌悪すべき男が主役であるにも関わらず映画は面白かった。
ネタばれ
彼が雇う助手も一見扱い安いお人好しっぽいのだが、なかなかどうして結構な奴。
ジェイクは相手を脅しながらも相手が必要とする映像を提供するだけの手腕があるが、助手は能力に見合わない報酬を求め過ぎたってことか。
もし、ジェイクがそれでも助手が必要不可欠な存在と思ったら殺しはしなかっただろう。
プロデューサーがそれでもジェイクの映像を欲したように。
(ジェイクがセクハラするニュース番組のプロデューサーの女性も、やっぱりどうかと思うような人なんで同じアナの狢的な)
そういう意味ではジェイクも嫌な奴だが、この助手もかなり嫌な奴なんで、彼の末路にはあまり同情を感じなかった。
(そうそう、この助手を演じたリズ・アーメッドってちょっとM・ナイト・シャマランに似てる)
とはいえ、てっきりこの助手が実は生きていて、事実が発覚してジェイクが破滅するとか、そういうオチが待っているのかと思いきや、順調に成功して終わるのも、あれあれって感じではある。
まあ、ジェイクのライバルが事故にあったように、いずれは彼も破滅するであろう未来は見えているけどね。
それともこういう人間の成功で終わるというエンディングは、嫌な奴がしっぺ返しをくらうという教訓とは別に、今の世の中で成功している奴らっていうのは、実はこんな奴らなんだという現実なのかもしれない。