私の中ではダリオ・アルジェントは『フェノミナ』あたりでオワタという気分だったのですが、意外にも『スリープレス』が原点回帰していて悪くなかったんですよ。
で、『サスペリア・テルザ 最後の魔女』『ダリオ・アルジェントのドラキュラ』は駄目駄目だったんですが、『ジャーロ』がその間にあって、これまた意外にも悪くない出来です。
ジャーロ(ジャッロ)ってまさにアルジェントの得意とするジャンルですが、それがまんまタイトルにまでなっております。ジャッロは黄色という意味もあるので、そこにもかけているのかな?
この作品はなんと言っても、エイドリアン・ブロディが警部役っていうのがいいですね。あのすらりとした長身にスーツ姿は非常に格好良いです。
変わり者の警部でひとりで猟奇殺人を追ってるって設定はなかなか面白いんですが、妹が行方不明になって心配している姉をすげなく追い返すあたりは不可解でしたね。
彼の少年時代を演じる俳優もなかなか雰囲気が似ていて良かったです。
日本人女性まで登場し、相変わらず殺される側はなかなか美女なんですが、ブロディと一緒に行動を共にするヒロインがごつい女性で、もうひとつなのがちょっと残念。
って、でもこの女性『毛皮のヴィーナス』のエマニュエル・セニエだったのね。
全体におとなしい出来というか、非常に落ち着いた出来で、あまりアルジェントっぽくない作品ですが、最初の大雨のシーンやTAXIはサスペリアっぽいし、殺人犯が美女をいたぶったり、殺人犯や警部の過去などはやっぱりアルジェント節健在です。
ネタばれ
「彼は黄色」という言葉だけで、それが黄疸によるもので肝機能に障害があるとかわかっちゃったり、行った先の病院でばったり犯人と出くわしたり、「守秘義務」とか言いながら案外あっさり個人情報を流出させちゃう看護士とか、警部がやたら自分の過去や事件の情報を被害者の姉に漏らしすぎとか、殺人を犯した子供に事情だけ聞いて見逃すチーフとか、随所に甘い面もあるけれど、アルジェント作品にしてはストーリーの流れが割とちゃんとしているような錯覚を覚えます。
ただ、「そこで終わり?」っていう、ぶち切れ感は半端ないですね。
とにかくあれではブロディ演じる警部が気の毒過ぎます。
妹が発見されたことでブロディと姉は和解するっていうベタなシーンは不要ってことですかね。
しっかし、後味すっきりしないっすよ。
それと死に際に仏教の教えを口にする日本人なんてそうはいないでしょうね。
実はブロディは警部と犯人役を二役演じていたそうですが、それって何か意味があるようなないような中途半端さです。