スターウォーズ(EP4)がはじめて公開され、成功を収めた直後、ルーカス監督はこうのたまった。
「実はこれ全9部作なんだよね~」
正直「またまた、はったりちゃうの?」と思ったものだ。

私はつねづね、何故ルーカスはEP4~EP6の後の話ではなく、それ以前の方を映画化しちゃったのだろうと残念に感じていた。自分が興味を感じたのは、ダーズベーダーの過去ではなく、ルーク達が平和を手に入れたその後の未来だったから。
それ以前の話となると、ひとりの人間が暗黒面に転落するお話を三作もかけて観たくないとうい気分もあったし、結末がわかっている以上、その辻褄あわせに終始する窮屈さを覚える。おまけにその辻褄さえいまいちあってないのでEP1~EP3は私の中ではなかったこと、もしくはパラレルワールドくらいの位置づけなのだ。
おまけにルーカスは「やっぱりこれ6部作に訂正ね」とEP6以降の企画をなかったことにしてしまったので、非常に失望した。

ということでディズニーに買収され、抜擢されたのはJ・J・エイブラムス
この人『スター・トレック』が悪くない出来だったので、もしかしていけるかなーという淡い期待はあったのだけど、予告の段階ではどうも期待があがらない。

前情報を出来るだけいれないようにしていたので、あくまで予告から推測される範囲での予想では、どうやらメインは女生と黒人っぽい。女性は可もなく不可もなさげな普通っぽい雰囲気だし、黒人の方はもっさりして華がない。この時点で肝心のメインらしきふたりに惹かれないという致命的なものを覚える。
メインを女性に持ってくるというのは、割と安易に目先を変える手段というか、『ベストキッド』が4作目で主人公が女性に変わるようなものだ。
女性と黒人というあたりに多分に政治的な意図を感じなくもない。

実際ルーカスの予定していた9部作では、エピソード7はこういう展開を構想していたのだろうか?

とりあえず本編を観てまず最初に思ったことは、わかっていたことだけど、20世紀FOXのファンファーレがないことがやっぱり淋しい。

方々でJ・J・エイブラムスは頑張ったと評価する声も多い。
確かにやたらに豪華絢爛で華美だったEP1~EP3に比べると、世界観がEP4~EP6よりなのは好感がもてる。
ルーク、レイア、ハン・ソロをまた登場させるというファンサービスもたっぷり、EP4~EP6に対するオマージュもたっぷりケレン味もたっぷりと、観ている間はそれなりに楽しめた。
心配していたメインふたりも予想していたよりは悪くないというか、華がないと思っていた黒人フィンが意外にコメディリリーフとしての面白さを発揮していた点はよかった。
前半までは「これは成功といえるかも」的な気分が高まったのだが、後半になるにつれ大味感が増し、結果的にもやっと感を残して終わってしまった。
勿論、最初から三部作で作られる予定のものだから、謎が多く残されるのは仕方がないし、終わり方が中途半端になるのもしょうがないかもしれないが、EP4のように一度そこで完結と言えるような区切りはきっちりつけて欲しかったように思う。

結果的にEP1の『ファントム・メナス』よりは面白かったという位置づけで終わったが、三部作としての評価はまだまだこれからという感じ。

ただ、どうも今のところ先の未来に期待出来るような面白さを感じないというか、これもまた私の中ではなかったことにしそうな、パラレルワールド扱いの気配濃厚である。


以下ネタばれになります。

結局終わってみれば、EP4焼き直し感が強い。
EP6で皇帝を倒し、崩壊した帝国が、「ファースト・オーダー」という違った形で復活していて、相変わらずレジスタンスが対抗している進歩のない世界。いや、歴史は繰り返すし永遠の平和などないのはわかるけど、新たに誕生する敵は、かつての帝国の焼き直しではなく、まったく違う脅威であって欲しかったような。
30年たっても宇宙船や戦闘機、ストーム・トルーパーのデザインがそのままとか、砂漠の星をはじめ、まんまこれまでのシリーズのイメージが焼き直しされているのは、オマージュとして嬉しいようなワンパターンような。下手にデザインするとファンがうるさいからいっそそのままでいいや的開き直りともとれる。

さらにデススター以上にパワーアップしたスターキラーのやり過ぎ感が半端なく、その攻略方法もこれまでのシリーズの焼き直し。
このパワーアップぶりは、よくホラー映画がシリーズを重ねる毎に内容がなくなって、残酷描写だけがアップしていく感じに似ているような。なんとなくスケールアップする部分がそこしかない的な。

恒星まるごとのエネルギーを吸い取るようなパワーを秘めたスターキラーが近くで大爆発しているのに、戦闘機が悠々と逃げてる様も、大味だなーと思う。

ダークサイドに落ちる人間と、新たな希望となるジェダイの後継者の対立という構造はEP1~EP6の繰り返し。

ルーク、レイア、ハン・ソロにしても、そりゃー、彼らのその後を観てみたいという願望はあるものの、EP6での大団円、幸福感、その後予見していた彼らの未来が、こんな形になってしまうのは残念でならない。
これなら下手に彼らを絡めずに、彼らが死んだ後のもっとずっと先の未来を描いて欲しかったように思う。
中途半端に絡めてしまったために、いろんなことが台無しになってしまったように思う。

例えば、ルーク。甥がダークサイドに落ちたショックで家出の引きこもりってそりゃーないわ。
もっと深い事情が今後明かされるならいいけど、それが理由だとしたらさすがに興ざめ。
行方不明になったルークの居場所を探すっていうシチュエーションは悪くないんだけど、なんだかひっぱった割には、地図で居所がわかればしゃーっと行けちゃうような場所なのね。

マーク・ハミルはここ最近の彼を見る限り二度とルークは演じられないだろうと思っていたけど、頑張ってルークっぽい雰囲気を持ち直していたので悪くなかったけどね。

キャリー・フィッシャーも二度とレイアは演じられないのじゃないかと思ったけど、まあ、リアルなおばあちゃんっぷりでぎりぎりあんなもんかなーっと。

そして何より残念なのは、ハン・ソロがぐれた息子のためにレイアと別れて、またまたしがない運び屋でせこいまねをしていたこと。
これは予告の時点から嫌な予感がしてたんだけど、若い頃からまったく成長がみられない痛い人になっちゃった気がする。
ハン・ソロはやっぱり成長してある程度落ち着いた大人になっていて欲しかったし、その上で、いざとなると昔のやんちゃっけが出るくらいの方が丁度よかった。
あれ? ハン・ソロすっかり落ち着いちゃった?って思わせて、ああ、やっぱり昔のハン・ソロだって思わせるくらいのギャップが欲しかったよね。うーん、そういう演出的な見せ方はすごくはがゆい。

挙げ句、息子に殺されるなんて、EP6のラストの幸福感の先にこんな未来が待っているなんて思いたくないな。さすがになんちゃってハン・ソロは生きていた的展開は望めそうにない死にっぷり。
いやいや、いくら衝撃性を出したいとはいえ、こんな殺し方はしちゃいけないというか、ものすごい台無し感を覚えてしまった。
私は特別ハン・ソロファンじゃないが、これは違う。何かが違う。

ところでカイロ・レンはハン・ソロとレイアの子供として、じゃあ、レイはやっぱりルークの娘で、従兄弟同士の喧嘩となるのか、あるいはお得意の双子という設定で、兄妹喧嘩の様相を呈していくのか、まったくそれらの血筋とは関係ないものなのかはわからないけど、このままだとまたもやスカイウォーカー一家のお家騒動っぽい話になりそうね。

カイロ・レンは若干ニンジャっぽい出で立ちがダサッと思ったけど、歴代のスターウォーズの悪役にはない、とてつもない小物感がちょっと面白かった。いやいや、それでいいのか?
仮面を早々に脱いで見せる素顔が、全然ハン・ソロにもレイアにも似てないのね。いや、それ言ったら、ルークとレイアの双子にも無理があるし、ルークとレイアの両親がアナキンとアミダラっていうのも無理はあるんだけどね。
とにかく、あまり魅力を覚えないお顔立ちね。

悪役側は全体にぱっとしないというか、ひとりとしてピーター・カッシングみたいな風格ある人物もおらず、若僧感半端なし。その若者観がある意味狙いなのかもしれないけど、どっかで締めるところをぴりりと締めてくれないといまいち作品自体も締まらない気がする。

メインのふたりも、確かに、レンやフィンは思ったより悪くはないけど、しかしふたりにはあまりに謎が多すぎて、いまいち彼らの心情に気持をのせにくいと言う欠点もあるかな。
これからのシリーズをひっぱっていくメインとしてはやっぱりいまいち力足らずというか。

ということでいまいちお気に入りの登場人物が見あたらない中で、唯一ポー・ダメロンはよかった(名前が駄目なメロンみたいだけど)。ただ彼もポジションとしてはランド・カルリシアンくらいな感じでそこまでメインという訳でもなさそう。

そうそう、マックス・フォン・シドーみたいなアレックス・ギネスに匹敵するよい俳優を起用しながらあの扱いはないわー。勿体なさすぎるよー。