「25年連れ添った夫が実はシリアルキラーだった」
と、題材は間違いないのに、料理の仕方を間違ったかのような映画。
フォアグラの具材でインスタントラーメン作ったような感じとでも申しましょうか。

全体的に中年夫婦のいちゃいちゃをひたすら見せつけられた印象でした。
どうも期待していた方向とはずれてるんですよね。

まず、シリアルキラーである夫にいまいちリアリティがないんですよ。
秩序型殺人なのか、二重人格なのかよくわかりませんが、あまりに背景がわからなさすぎる。
この種の題材で興味があるのはやっぱりそのあたりだと思うんですが、最後まで「この人本当にシリアルキラーなの?」という違和感を覚えました。
いかにもそれっぽくする必要もないんですが、ギャップがあるにせよ、もうちょっとどっかおかしい感が欲しいというか、なんか違うなーという感じですよ。
いかにも普通っぽい人が実はって怖さはあるんですが、それにしてもそれにしてもですよ。

妻も最初こそ怯えてますが、実にたくましいというか、いや、実際夫がまったくシリアルキラーっぽくないので、ああ言う風に冷静になれるのかなーという気もしますが、ちょっと常人の神経ではついていかないたくましさって言うんですかね。
本来この妻の気持ちに共感するところなんですが、後半から殆どおいてきぼりです。

いまいちリアリティを感じない展開に、途中からブラックコメディなのかな?という気分にさえなりました。といって、『シリアルママ』ほどふりきれてもいないし。

もともとはスティーブン・キングの『ビッグ・ドライバー』という作品集に収録された中編のようですが、多分小説で読めば妻の心理描写などキングのお得意とするところで、もう少し面白いのでしょうが、映像にするとそのあたりの心理が表現しきれず、いまいちになってしまうというキング作品映像化の難しさが如実に出ているように思えますね。
しかも脚本もスティーブン・キングというのもよくなかったのかもしれません。なんちゅーか、これまでの作品を観ても、映像方面の才能がいまいちという印象なので。

最後に登場する元刑事と妻とのやりとりはキングらしいというか、まんま『黙秘』っぽかったですね。

ところでネットで検索するとあんなに簡単に殺人犯に殺された被害者の遺体ってほいほい出てくるもんなんですかね?