あまり期待してなかったのだが、意外に面白かった。
個人的にツボ。

「ロストフの殺し屋」「赤い切り裂き魔」と呼ばれたアンドレイ・チカチーロの事件をモデルにしたトム・ロブ・スミスの原作を映画化。
アンドレイ・チカチーロ事件はあくまでモデルで、時代設定なども異なっている。
(アンドレイ・チカチーロ事件はwikiでさらりと読んだだけでも非常に引き込まれる。この事件を描いた『ロシア52人虐殺犯/チカチーロ』が是非観たい。)

映画のメインはミステリーではなく、スターリン政権下という時代背景、「ソビエト連邦には犯罪は存在しない」という建前の為に捜査が困難となる様がスリリングに描かれていて、非常に面白かった。こういう感じのミステリーで言えば、アン・ペリーのウィリアム・モンクシリーズを思い出す。
また、主人公と妻の関係などもかなり好きな設定(下記ネタばれ1参照)

イギリス人の作家なので、当時のソ連をどこまでリアルに描けているのかわからないが、「理想を妄信している国家の怖さ」みたいなものはよく表現されていて、ナチスドイツと同じくらい怖い空気が漂っていた。
史実に正確かどうかはさておき、フィクションとしても教訓としてとらえるには良い話。

しかし、肝心の事件に関しては大きな謎を残したまま終わってしまった (下記ネタばれ2参照)
原作読めばこの謎はわかるのかな。

この映画で印象的なのは、銃で撃ち殺すシーンなどが妙にリアルで生々しい点。
ここは、何度かびくっとさせられました。
あと、言語が英語だが、ロシア語っぽく話しているので雰囲気は出ていた。

タイトルの44は殺された子供の数なのだが、映画の中でも45人目の犠牲者が出ているのに、何故44なんだろう。
また副題から子供が森に行って行方不明になる話なのかと思ったらそういう訳ではなかった。

実は私、トム・ハーディという俳優、もっさりした印象であまり魅力を覚えない。マッドマックスでも主役なのにあまり印象に残らない。でも彼は役のあたりがいいのかねー。何故か自分の身の回りも含め人気がある。今回も役柄がよい。
あの独特の低い声はちょっとくせになるかな。
孤児である主人公のあの子供に対する思い入れや正義感はどこからくるのかよくわからなかった。

妻役のノオミ・ラパス、この人もちょっと微妙な女優さんなんだなー。いまいち女性的な魅力を感じないと言うか。
しかし、なにげに奥さんすっごい強いのよ。さすが『ドラゴンタトゥーの女』って感じ。

ワシーリー役のジョエル・キナマンはイケメンと思ったら、ロボコップか。
ヴァンサン・カッセル、ゲイリー・オールドマンの出演はよしよしと言う感じ。

まあ、こんな感じでメインのふたりの俳優がいまいち好きじゃないけど、映画は気に入ったという希有な例。

なんだかシリーズとして続きそうだなーと思ったら、原作の方は既にシリーズ化されているようだ。映画もこのままシリーズ化されるかもね。

ネタばれ1
ソ連国家保安省(MGB)に所属する夫を恐れ、名前を偽り、愛していないのに結婚を承諾した妻という設定が面白い。夫は妻を愛してるのに、致命的にすれ違っている。でも、事件を追う内にふたりの絆が結ばれる展開がよい。

ネタばれ2
で、犯人は何故、子供の胃をわざわざ摘出したのだ? どっかに説明あった? 見落とした?
【追記】
調べてみると、どうもカニバリズムってことらしい。いや、なんかそんなようなこと言ってたけど、なんで胃だけ食うのかわかんなかったから、ぴんとこなかった。
昔人を食った時胃が特に美味しかったってことなんか???