『マップ・トゥ・ザ・スターズ』でジュリアン・ムーアに注目したので、第87回アカデミー賞をはじめ、数々の映画賞で主演女優賞を受賞したこの作品も観てみることにしました。
で、『マップ・トゥ・ザ・スターズ』ほどのインパクトはないけれど、さすがにジュリアン・ムーアは手堅い演技です。

この種の題材は観る前から辛いですね。
私も年を重ねるに連れ、ど忘れがどんどんひどくなるので、なんだかこういう映画を観ると不安になります。
『明日の記憶』『アイリス』と、アルツハイマーを扱った映画は記憶を失う本人の絶望と、それを支える家族の絶望、そこに何か救いを求めてつい映画を観てしまうのです。
結果は何か空しい気持に陥ってしまったりするのですが。

この映画も、マイルドに、前向きに、淡々と描いているけど、なんていうか救いは観念的にならざるを得ない感じというか。
そして、映画に描かれる主人公は、ホームヘルパーを雇えるだけの経済面と支えてくれる娘がいるだけ、まだ恵まれた状況にあると言えるのです。

老人になれば自然と記憶は薄れていくもので、それは死に向けてこの世の未練を残さぬ為の救いなのかもしれませんが、それでも忘れてしまうことがこんなにも恐ろしく悲しく感じるのは何故なんでしょう。

自殺することさえ忘れてしまった彼女にとっては、もはやそれを悲しいと思う気持ちもないのでしょうが。

少々この苦しい現実を美しくまとめすぎているような気がして、物足りない気分にはなりましたね。