なに、これ、全編クライマックス!
アドレナリン大放出!
前半だけでアクション映画一本分の迫力だったのに、それと同じテンションがさらに後半にも続くので、お腹いっぱいを通り過ぎて消化不良で噴出するっきゃない。
体の弱い人はこの映画一本観たら死ぬかもしれない。
IMAXで観たので余計に体力奪われてへとへとになってしまった。
一緒に行った仲間が全員しばらく抜け殻状態だったもんなー。
27年ぶりのマッドマックスシリーズ第4作だが、『ベイブ/都会へ行く』『ハッピー フィート』と、やんちゃパワーがすっかり影を潜めて、もはや隠居の域に達したかと思われたジョージ・ミラーにまだこんなパワーが秘められていたとは!
しかも御歳70歳!
まさに、長年頓挫した企画がここにきて、たまりにたまった活火山のマグマ大放出って感じで、いや、もう、最初から最後までドッカーン! ドッカーン!大噴火状態。
内容は本当にない。一言で言えば「行って帰ってくる話」。
世界観も殆ど説明がないので、もう、勢いにのって黙って着いて来い状態。
広大な大地と、特異なキャラクターたちによってまるでファンタジーのような趣。
それでも、各登場人物を僅かなシーンでこちらにしっかり印象づけてくれる。意外に細かい描写を丁寧に描いていたりする。
特にウォーボーイズの戦士、ニュークスが非常に魅力的だった。最初はただの脇役ですぐに退場と思っていたのだが、気がつけば実質主役?と思えるくらいおいしいところをさらっていった。
神格化しているイモータン・ジョーの前でドジを踏む「あちゃー」感といい、自分の腫瘍に名前をつけているあたりといい、見た目は不気味なのになんだかキュンとしてしまう。
そして「俺を見ろ」ね。すっごくよかったー。
このニュークスの描き方は監督の愛を感じる。
元々マッドマックスの新作は女性を主役にするなんて話もあった為か、この作品は明らかに女性メインの話となっている。老婆までも大活躍なので、女性もわくわくする映画だ。
相変わらず醜悪でクレイジーな悪役たちに対して、モデルクラスの美女たちがなんと一服の清涼剤に思えることか。実質の主役はシャーリーズ・セロン演じるフュリオサ大隊長と言ってよいし、肝心のマックスは狂言回しというか、非常に印象が薄い。
何しろ話の半分くらいまでは車に縛られて「一体いつになったら活躍するの?」状態なのだから。
実は私はマッドマックスシリーズがそれほど好きではない。
というのも、シリーズ一作目がカッコイイというよりは怖すぎて、半ばトラウマのようになってしまい、オーストラリアはコアラやカンガルーのいる大自然豊かな国から、あんな暴走族が横行する怖い国なんだという認識になるほどで、マックスの友人が殺される場面など、私のトラウマシーンベストワンと言っていいほどである。
その感情があって、それ以降のシリーズもあまり観る気がしなくて、それでも頑張って観た結果、パート2は世界観ががらりと変わりすぎてもはや別映画だし、パート3は殆どギャグという感じで、「なにこれ?」となってしまった。
シリーズ通して、ジョージ・ミラーの描く悪役たちが非常にクレイジー過ぎて怖いし、完全にいかれていて苦手だったのだが、今回も思いっきり狂ってはいるけど、怒濤のようなアクションの最中にギター弾きまくり、太鼓たたきまくりの演奏隊など笑わせてくれる。
牛がいないという設定なのか、母乳をミルク代わりに飲んだり、なんか思いついてもやらないようなことを堂々と描いたり、人間を直に輸血袋にするとか、こういうクレイジーな世界観って一体どっからわいてくるもんなんだろう。
オーストラリアの監督だけにどこか原始のパワーを思い起こさせる悪役たちはアボリジニとかベースにしてるのかなと、ベタに思ってみたり。
あと、今の時代、放射能による奇形と健常者という、かなり問題になりそうなリスキーな部分をよく描いたなと思った。これだけのメジャー大作でよく許可が下りたというか。
とにかく過去シリーズは苦手だったが、老いても、尚シリーズで一番テンションの高い作品を繰りだしたジョージ・ミラーには敬服するしかない。
このパワーにはただただ圧倒される。
さらにこれを三部作にするとは、完結する頃には監督、死ぬんじゃないかと心配。
果たしてこれ以上のテンションを繰り出すことが出来るのだろうか。こっちも命がけでシリーズを追うっきゃない。
とりあえずしばらくはブレイクブレイク。
こんな映画しょっちゅう観てたらほんと死んでまうわ。
追記
パート1の暴走族リーダーを演じたヒュー・キース・バーンが今度はカリスマ司令官となって再登場。出世したな。