近代ハプスブルグ最大のスキャンダル、ルドルフ皇太子と愛人マリーの心中事件『マイヤーリング事件』は数多く映画化されているようですが、この作品は1957年に放映されたアメリカのテレビ映画です。
生放送で1度だけ放送されたことで幻の作品と言われているようですが、復刻されて去年日本でも劇場公開されました。
もともとはカラー作品ですが、復元されたのはモノクロ。カラースチールで観るとやっぱりカラーで観たかったなーと思います。
原作は毎度おなじみクロード・アネの小説『うたかたの恋』。1968年に公開されたテレンス・ヤング版『うたかたの恋』ならば以前観たことがありますが、愛人との悲劇をかなりロマンティックに描いております。

実際の事件は、心中とも他殺とも諸説あり、未だ正式な真相は明かされておりません。
ただ、生前確執のあったフランツ・ヨーゼフ1世以外には遺書が残されているので、父親への反発と抗議、絶望による心中ではないかというのが有力な見解のようです。

ルドルフは本当はミッツィ・カスパルと心中しようと考えてたいようで、断られたためにマリーを選んだという話もあるようです。
そんな現実を踏まえると、まるで運命の恋に落ちたかのようなルドルフとマリーの描き方など、甘ったるいロマンティシズムに脚色されたこの物語は面白いとは言いがたいのですが、このドラマの見所はやはり、オードリー・ヘプバーンとメル・ファーラーの夫婦共演というところではないでしょうか。

私は特別オードリー・ヘプバーンファンではないですが、『ティファニーで朝食を』の彼女は魅力的だなーと思いました。ただ、永遠の少女という感じの人なので、なんというか久しぶりに観るとがりがりで色気がないなーなんてことをつい考えてしまいます。

ところで、このテレビ映画で流れる曲が、『プロデューサーズ』の春の日のヒトラーのオープニングとまったく同じメロディなんですよ。この曲はドイツ語圏ではポピュラーなメロディなのか、国歌みたいなものなのか、謎ですね。