まあ、派手なスペクタクル好きですし、クリスチャン・ベイル主演だしね~。
チャールトン・ヘストン主演の『十戒』、ドリームワークスの『プリンスオブエジプト』、でもってコレですよ。どんだけ出エジプト記が好きなんだって話ですよ。
まあ、十の災いをはじめ、出エジプト記はビジュアルに適した派手なエピソードが多いし、ついつい観たくなっちゃうんですよ。当時の技術では多少しょぼかった『十戒』も今の技術なら迫力満点に撮れるだろうし。

ところで、ほぼ『十戒』や『プリンスオブエジプト』の焼き直しかなーと思ったら、予想に反して、これはモーゼの新解釈でしたね。

こっからネタばれしちゃいます。もっとも出エジプト記って有名なお話なんで、ネタバレも何も…って感じですが。

まず、モーゼは迷える民を導く羊飼いではなく、迷える民を率いる将軍なんですよね。この解釈の違いが『十戒』や『プリンスオブエジプト』のように杖を持ち長いローブを羽織った羊飼いたるモーゼ像と一線を画してます。

なんで、ラムセスにヘブライ人の解放を願うシーンもいきなり剣で脅してましたからね。これまでの人格者たるモーゼ像とも違い、とっても人間臭い存在として描かれてます。
ヘブライ人を率いてエジプトに攻撃仕掛ける様も、なんだか今時のテロを想起させるというか、黒装束のヘブライ人は悪く捕らえるとダーイッシュを思い起こしちゃいます。いや、一緒にするなと怒られそうですが、他意はなくつい頭に浮かんじゃったってレベルなんで。

さらに、これ、頭打っておかしくなったモーゼが様々な偶然や自然現象に助けられて民を率いる預言者になるって話なんです。斬新ですね。
まあ、偶然なんかじゃなくて、これは神のお力だと解釈するのは自由ですけど、作品はあからさまな神の奇跡という風には描いていないのは確かです。

ただ、殆どの事象が「風が吹けば箱屋が儲かる」的な因果関係と解釈出来たとしても、過越だけは合理的な説明がつかない。ここだけは神の奇跡ってことになっちゃうのかな~。
(一番のミラクルは津波にのまれたモーゼもラムセスも都合良く対岸に別れて殆ど無傷で生きてるってことだったりしますが)

私にはモーゼが終始頭を打った妄想で行動しているように見えるので、神の威光を借りて奇跡を起こすというカタルシスはまったく感じなかったのがちょっと物足りない感じですね。
いや、だって、やっぱ神の力を借りてどどーんと海をまっぷたつって言うケレン味、期待しちゃってたから~。ああ、海に隕石落ちてそれで引き潮になって津波ですか~って言う肩すかし感。

そんな感じでリアル路線の追求もあって、カリスマ性が乏しいモーゼです。
兄アロンの扱いも添え物でしたね。

そんなこんなで、映像はそれなりに楽しめたんですが、なんとなく宙ぶらりんな気持になってしまいました。
もっとも、半ば総合失調症のようなモーゼがそんなぶれぶれな自分を含めて民を律するために自ら十戒を掘る(聖書ではモーゼが考え出したものでも、彼自身や他者が掘ったものでもないとされているのに)など、後から考えるとじわじわ興味深いというか面白いなーと感じます。
そういう意味ではリドリー・スコットは結構際どいところに挑戦しましたね。
それにしても、このことを世の宗教家が問題視しなかったこと意外です。ヘブライ人がピラミッドの建設に関わったかどうかの時代考証以前に大きな問題のように感じるのですが。