ノアの方舟を今の技術で描いたら、なかなか壮大なスペクタクルになるだろうと思う。
旧約聖書の創世記という題材にそこまで興味があるかと言われると微妙だが、内容うんぬんより、地球上の全動物のつがいが一艘の舟に乗り込むという、物語上でしかあり得ない状況をリアル映像で描いたらどうなるかという興味はある。
基本派手なスペクタクルは嫌いじゃないので、洪水で世界が滅びるというビジュアルも観てみたい。
というか、それくらいしか興味がないので、逆に観ようかどうか迷い続けて、途中、もう観なくてもいいや!って気分にもなったのだけど、蔦屋にたまたま観たい映画があまりなかったので、なんやかんや言いながら結局借りてしまった。
にしても、前半分の退屈なこと。
眠くなることしきり。
やっと洪水が起こっても、特別迫力満点の映像って訳でもなく期待はずれ。
乗り込む動物もそれほど描写がなくて、舟の中でもお行儀よく眠っているので、方舟が動物園のようににぎやかになって収拾つかない様を期待していた私としては拍子抜け。
ここよりネタバレ
しかも、ノアが途中から狂信者に見えてホラー映画並に怖い。
神がおっしゃるから、家族全員皆殺しにするって発想がどこぞの殺人鬼みたい。
家族が殺し合って、三男だけが死ぬことも出来ず命果てるまで生き続けるなんてことを求めるとは、この物語の神は悪魔か?
とにかく旧約聖書の創世記からかなり脚色された内容であり、ノアの方舟というよりは神の御心とあらばひとり息子のイサクを差し出すアブラハムのエピソードも思わせる。
そんな感じで承伏しかねる展開に憮然とした気分になったが、予想外にこの映画で泣いてしまった。いったいどこで泣いたかと言うと…
ハーマイオニーが双子の娘を殺そうとするノアに
「殺すなら泣き止んでからにして。泣いたまま殺さないで。安らかな状態で殺して」
と願うところで、何故か涙があふれてしょうがなかった。なんでそんなに泣けてくるのか自分でもわからず不可解なのだが、とにかく泣けてしまったのだからしょうがない。
ということで、予想外に泣いてしまったが、泣ければいい映画という訳でもなく、人にオススメするつもりもない。
ただ、宗教とは哲学であり、この映画は究極の絶望について哲学的に描いている作品だと思う。
時に人は絶望のあまり家族を皆殺しにしたり、無関係の人を巻き込んで通り魔的に集団自殺をしようとする。
その絶望から人を救うのは、ほんの僅かでもこの世への愛情、希望に起因する。
まあ、何を今更という部分でもあるかもしれないが、ここまで壮大な絶望を観ることはなかなかないので、これはこれで面白と言えるのかもしれない。
しかし、やっぱり映画としてはつまらんかなー。
強いて言うなら天使の描写とかは嫌いじゃない。
それにしても、これがダーレン・アロノフスキー監督作品とは信じがたい。