『ビッグ・アイズ』を観たら、クリストフ・ヴァルツの名演をもっと堪能したくなっての、再見です。
タラ作品がそれほど好きではない私も、この作品はタラちゃんの最高傑作だと思っています。
タラ作品にしては珍しく何度も観ている作品ですが、何度観ても面白いですね。
ひとえにクリストフ・ヴァルツの魅力に負うところも多いのですが、それ以外にもどの章も緊張感に満ち、見応えあるものになっています。
各章について語りたいことはいろいろありますが、今回クローズアップするのは第二章です。
ここから先はネタばれします。
もともと、このお話って勧善懲悪で、ナチスはふるぼっこしてもかまわない最大の悪人として認知されているので、どんなひどい扱いをしても許されるような空気があります。
私もナチスは悪しき存在、嫌悪すべき存在としてあたりまえのように育ってきましたし、ホロコーストという大罪を犯したことも事実ではあるのですが、それでもバスターズの所行が肯定出来るかと言われると、彼らもまた同じ穴の狢的にも思える、そんなシーンです。
ここで、非常に印象深いのが、ドイツ軍のラハトマン軍曹です。
演じるリシャール・サムエル(Richard Sammel)の面構えが、ドイツ人らしい頑固一徹な軍人という感じで、信念と誇りに満ちていて、ナチスであっても何やらカッコイイとさえ思える人物です。
実際、彼はイーライ・ロスがバットを叩きながら暗闇から近寄ってくるという非常に怖い状況でもひるみもせず、殺される直前まで毅然と相手の目を見つめ返す気骨の持ち主です。
なんていうか、私はこの俳優さんが好きになっちゃったもので、イーライ・ロスが彼を殴り殺すシーンは胸が痛かったですよ。
こんな誇り高い人物をこんな惨い殺し方をして欲しくないと。
確かに、ラハトマン軍曹はユダヤ人を差別し、憎むべきナチ思想にそまっていたかもしれないのだけど、でも、このシーンだけをとると、どっちが悪人かわからんほどです。
この作品においては、バスターズよりも、クリストフ・ヴァルツ演じるランダ大佐や、ラハトマン軍曹の方が魅力的に見えてしまうのは皮肉なものです。
※ユダヤ人であるイーライ・ロスはヒトラーを撃ち殺すシーンもほんものの恨みがこもっていて怖いです。
※ヴァルツの演技見たさに見直した訳ですからヴァルツについても大いに語りたいのですが、長くなるのでまた次の機会に。