なんてこった! ヴァルツ劇場じゃないか!

ということで、嫌な奴を演じさせたら天下一品のクリストフ・ヴァルツと、夫のゴーストペインターと化した妻という興味深い題材ということもあって、苦手なティム・バートン監督作品ですが久しぶりに劇場に足を運んでしまいました。

ティム・バートン監督は、ビジュアル的に観るべきものがあって、これまでは割と彼の作品は観ていたんですが、『アリス・イン・ワンダーランド』あたりから、「この人の作品は面白くない!」って事に気付いてしまったんですね(遅っ!)。

いや、以前から薄々気づいてはいたんですが、なんとなくアーティスティックなビジュアルにごまかされてズルズルとつきあってきてしまった訳ですよ。
でも気付いてからはスッキリ! もうこれからはこの人の作品を無理に追わなくていいんだと、胸をはってこの人の作品がつまらない! と公言していいのだと、好きでもない男を好きになろうと努力していたことに気付いた時のような爽快感です。

でも、今回は実話に基づいたお話だし、ティム・バートン作品でも唯一面白かった『エド・ウッド』も実話に基づいたお話で、なおかつ脚本家が『エド・ウッド』と同じ人が担当しているとなるとちょっと期待出来そうな気が致します。

題材としても、一応美術科を卒業したワタクシとしては、女流画家の伝記ものとして気になります。
実際、画面に映し出されるマーガレット・キーンの絵は魅力的で画集が欲しくなりました。
ただ、アマゾンで探してみたのですが、入手は難しそうです。

映画自体はあまりティム・バートンらしさを意識しない作品でした。
なんで、逆にお話に集中出来るというか、観ている間は、女性の地位とか、自立とか、成功の代価とか、いろいろ考えるところもあったんですが、その何もかもがふっとぶ勢いだったのが、法廷でのヴァルツの演技ですよ。もう完全にヴァルツ劇場と化してました。
『ジャンゴ 繋がれざる者』では助演男優賞をとったヴァルツですが、実は私には物足りなくて不満だったんです。やっぱり『イングロリアス・バスターズ 』や『おとなのけんか』のようなヴァルツが観たい!
で、この映画の彼は最高でした!
やっぱりヴァルツは魅力的な俳優だと再、再、再認識です!
途中、『シャイニング』のジャック・ニコルソン化してたので、どうなることかと思ったのですが、案外ヴァルツで『シャイニング』リメイクもありかなと。
彼が怒鳴る時はドイツ語で疸を切るように喉を振動せるような発音になるので、そういうところがドイツ語圏出身の俳優だなーと思い、嬉しく思います。

ということで最終的には全部ヴァルツに持って行かれそうな勢いがありましたが、最後にマーガレット・キーンご本人のお写真が出た時、何故か泣きそうになりましたよ。
87才の今も現役で画家を続けていらっしゃるようで、幸せそうな彼女の姿にほっとします。

★追記★
評論家を演じていたのはテレンス・スタンプだったんですね。
すごい存在感で「どっかで観た俳優だなー」と気にはなってたんですが、つい最近『コレクター』を観たばかりだったのに気づきませんでした。
この評論家だけは敵にまわしたくないってくらい怖かったです。