が帰国した。

二週間ぶりの再会だった。

 

ベトナムから帰国して、私は日々の中でケビンの存在が自分でも驚く程大きくなっているのを感じていた。

あの告白がきっかけで意識しだしたことには変わりないが

でもどうしても踏み出せない気持ちを持っていた事も事実だった。

 

「あんこ、自由でいてね」

 

この言葉の意味がよく理解できていなかったからだ。

言語の違いでニュアンスが変わり伝わっているのか…確かめなければいけないと思っていた。

 

 

彼との待ち合わせ場所へ向かう。ワクワクしていた。

こんな気持ちはいつぶりだろう。

 

待ち合わせ時間まではまだかなり余裕があったが、彼はそこで本を読みながら待っていた。

到着したことをまだ連絡していなかったが、ふと彼は読んでいる本から目線を外しキョロキョロと首を動かした。

 

まだ数メートル離れた場所にいる私を見つけた様子で、少し目を凝らしてこちらを見ている。

その直後ジャンプするかのように飛び上がり、満面の笑みで走り寄ってきた。

 

犬なのか。犬感がすごいぞ。

 

なんだか愛おしい気持ちと、「見つけてくれた」喜びで私も少し彼のもとへ駆け寄っていた。

人通りのある駅の横で、突然力強く抱きしめられ面食らったが幸せな気持ちだった。

 

会いたかったよ、あんこ。

 

私も同じ気持ちだった。

再会を喜びつつ、私たちは食事のためレストランへ向かった。

 

温かい空間だった。

いつものように楽しい会話、何を話しても楽しかった。

 

お酒も進み、いい気分で二人で駅までの道を歩いていた。

 

まだまだ夏の始まり。

蒸し暑い夜だったが、ベトナムで皆で過ごしたあの暑さを思い出して

全然余裕だねなんて言いながら、メイン通りから一本中に入ったその道では

ゆるやかな時間が流れていた。

街灯も車のテールライトも、全部ぜんぶキラキラしている。

 

私はケビンに声をかけた。

 

私はあなたと一緒にいたいと思ってる。

 

それは恋人になるということ?

 

うん、そうなれたら。

 

僕は…あんことずっと一緒にいたい。

でも来年日本を離れて国に帰るんだ。

あんことの別れが辛い。

あんこも辛くなるね。

だからあなたはこのまま自由でいてほしい。

 

ん?え?

ちょっと待って??

 

…そうか。帰るのか。

だからこのままの関係がいいということか。

そこまで説明しなさいよ、ていうかそれならなんでそんな中途半端な言い方をしたの。

 

そんなことをぐるぐる考えてた。

 

ケビンは言った。

 

あんこがそんな風に言ってくれるとは思わなかった。

気持ちを伝えたいという我儘だったけど、帰るまでの1年の間僕の気持ちを知ってて欲しかった。

勝手だった、ごめんね。

もし・・あんこが望んでくれるなら恋人になりたい。

先のことは分からない。

僕たちは永遠に一緒かもしれない。

 

ズルいな。

それじゃあまるで現時点、終わりが見えてるみたいじゃない。

 

…でも私の答えは決まっていた。

 

 

「ケビン、私はあなたと一緒にいる。

楽しい時間をたくさん過ごそう。」

 

そうして私たちの幸せで でもどこか違和感のある、カウントダウンのような恋がスタートした。