第一章 結婚式の初参加
人生で初の結婚式に参加してきたぞ!
俺の妹が結婚式を挙げることになってそれに行って来たわけだ。
久々に地元に帰って昔同級生に電話を3回もしたが、綺麗なまでにスルーで
現在にいたるまで返信無しである。ふざけんな!
この俺は今まで、運のいいことに結婚式なんぞには一度も呼ばれずだったが
今回はこんなおちゃめなホワイトネクタイなんか装備しちゃって、町中の視線を独り占めだ!
ちなみに、知らない奴に言っておくが俺と妹は小学校3年以来、全く口も利いてない。すれ違えば暴力を働き、TVを見てればチャンネルを無理やり変えて居間から追い出すという阪神の金本よりも手のつけられない荒くれアニキだったことを伝えておこう。
第二章 身を潜め、隠れる男
親戚一同、会社関係者、約100名ほどが参加の大きな結婚式であった。
親戚達が待機してる部屋に一番遅く、親に連れられて参加。
無論、3秒で居場所がないと体が反応し、男性の着替える部屋に一人で隠れる。
俺はにぎやかな場所が大嫌いという、現代科学では到底解明できない男だ。未来型思考の持ち主であるからゆえ、仕方ないのだ。
しばらく隠れてると、新郎の親父さんがやってきて「どうぞ、よろしくお願いします!」と挨拶をしにきたではないか!
まさか、「いい歳をした男が男性更衣室でなにをやっちょるか!とでも言いそうな空気なのは馬鹿の俺でも理解できた。
俺も「は、はい!こっちこそ」と言うのが精一杯だ!
そして、全員での写真撮影だ。
俺はこの集合写真ってのが大嫌いだ。
キャメラマンが何度も「良い笑顔でいきましょう!」とスマイルを求めてくる。
俺はスマイリー菊池でも、マクドナルドの店員でもないのでノースマイルだ。
なぜ、笑わないかだと?笑うのはこの俺のポリシーに反する行為だからだ!
第3章 数年ぶりに泣いた男
集合写真を撮り終えて、今度はチャペルってとこで親族紹介の挨拶だ。
その儀式が終わり、賛美歌を歌った。
ここで、俺の体に化学反応が起きてしまった。
なんと、大粒の涙をこぼして泣いてしまったのだ!
しかも「ひっくひっく…」と蛙の潰されたような嗚咽をあげ肩をプルプルとプリンのように揺らして顔面からあらゆる汁を噴出してしまったのだ。
まさにハプニングである、どんな卒業式でも涙知らずの俺がこんなことで泣いたのが許せないのだ。
よくよく考えたら親の猛烈な反対に合い、結婚できなかった俺を対比してくやしかったのだろう。
今思っても、何で泣いてしまったのか不思議で仕方ない。
第三章 もう止まらぬ泣き虫野朗!
泣いたおかげで目を赤くして野ウサギのようになった俺に対して親戚の人達はとても親切だった。
6年ぶりくらいなのに積極的に向こうから話かけてくれるのだ。
もし俺が逆の立場だったら俺みたいな親戚のガキがいたら120%ガン無視だね。
一方的に嫌われてると、親戚を誤解してたのは俺一人だったかもな。
いよいよ、料理の登場だ!
まさに今日は一食も食ってなかったので腹ペコだ。
見たこともない料理が次々と登場する。
ただ、フランス料理か知らんが、量が少なく物足りない。
もっと親子丼とかにんにくの丸揚げが食べたかったのは俺だけじゃないはずだ。
でも来客はえらい人がいっぱい来てたな。
中日のスカウトマンやら、某社長とか、中日の某ピッチャーからも祝電が来ててくやしいが負けたと思ったね。
親に無理やり手を引っ張られ、家族一同で記念撮影をした。
多分家族で撮影したのは俺が中学2年の時に家族旅行に行った際「3000円あげるから…」と親から懇願されてお金に目が暗んで撮影したっきりだと思う。
そのあとは、催し物の始まりだ。
まあ、大学生のノリというか、アキバ48のコスプレ替え歌とか、は論外としてハンドベルはよかったな。
そして、またもや俺を泣かせる出来事が起きた。
結婚にいたるまでの写真をスライドショーで見て昔の無邪気な自分が写ってたのを見てまた泣けてきた。
とどめは妹が父親にうけてのメッセージを読んだとき、もう俺の涙の蛇口は破壊され下を向いて泣いた。
手紙には父親に感謝される言葉はあっても俺の名前、いや存在すらなかったことになっていた。
それはどうでもいい。なぜならこの歳になるまで、一言も話しかけてもないし、口すらまともに聞いたことないのだから…
最終章
十数年ぶりの会話
涙を見られるのをポコチンを見られる以上に恥ずかしいと思ってる俺は、式の途中で会場を逃げ出した。
そして顔をティッシュペーパーのようにくしゃくしゃにしてトイレに飛び込み個室でワンワンとむせび泣いた。
ワンワンとなら聞こえはいいが「うえ~ん!うえ~ん!」と泣いたのかもしれない。
やっと感情がおさまり顔を洗って会場へ戻る。
でも、俺は人生で一大決心をした。
妹と十数年ぶりに喋ってみよう…
これは勇気がいる。
普通の人なら「なにを馬鹿な…」と思われるかもしれないが、俺にとっては好きな子に告白をする以上に緊張する。
親戚のおばさんに「妹と会話したほうがいいですかね?」と聞くと
「当たり前じゃない、手伝ってあげる!」とアシストをしてくれることになった。
妹が退場する時、一応こっちにきたが兄の俺には一瞥もくれずに会場で見送りを新郎とするみたいだ。
もうここしかない。
心臓が爆発しそうなくらいドキドキしたぞ。その時の会話のVTRがこれだ!
俺「おう…!今回よかったぞ。」
妹「あ…ありがとうございます…」と蚊の泣くような小さな声で返事が来た。
きっと、そばにいた親もびっくりしたはずだ。
なんせ、この俺が勇気を振り絞って話しかけたのだからな。これが小学校低学年の時以来の貴重な会話だ。
新郎には格好つけて「妹を頼んだぞ!」などとスペシャル上から目線で言ったら直後に新郎の親父にとっ捕まって「なんでもっと笑わないんだ?」と真顔で聞かれたのは内緒だ!
しかも「よし、今度俺と飲みに行こう!」と言われ「いや、僕、飲めないんでいいですよ」とマジで答えた自分をタイムマシンにのってぶっ殺してやりたいわ!
なんちゅう断り方しちまったんだ…
妹の結婚式の報告は以上だ。
だが、今でも不思議な体験でなぜ俺は二度も泣いたのか?
考えても不思議な体験であった。
記事&写真 ウエディングケーキを食いながら一人、男泣きをした横山緑