7/26 既習者2010
法人の名誉毀損

サンケイ新聞意見広告事件620424

言論、出版等の表現行為により名誉が侵害された場合には、
人格権としての個人の名誉の保護(憲法一三条)と表現の自由の保障(同二一条)とが衝突し、
その調整を要することとなるのであり、
この点については被害者が個人である場合と
法人ないし権利能力のない社団、財団である場合とによつて特に差異を設けるべきものではないと考えられるところ、
以下省略。


法人の人権享有主体性
否定説
∵法人はもともと個人が基本的人権を享受する上で必要な法的技術として法律上考え出されたものに過ぎない

肯定説
∵法人の活動は、結局はその効果が自然人に帰属すること
∵法人が社会において自然人と同じく活動する実体であり、特に現代社会における重要な構成要素であること
←否定説の論拠ともなりうる
←直ちに同様の人権享有主体性が認められるわけではない

対国家限定肯定説
:法人が人権を主張しうるのは、法人が国家と対峙する場合だけである
=団体がその構成員と対峙する場合には、人権を主張する立場にはない
∵国家と個人の中間に介在する団体が、国家と対峙して個人を保護することもあれば、逆に個人と対峙して個人を抑圧することもあるから、法人などの団体が人権を主張しうるのは、国家と対峙する場合のみである

(国家や、地方公共団体の人権享有主体性)
国内では原則否定
∵人権は私人が国家や地方公共団体に向かって主張すべきものであってその逆ではない
例外:国公立の学校や病院は環境的人格権の主体となるか、外務省や地方公共団体も名誉権の主体とならないか、といった問題に付いて肯定する余地がある(◯これも原則例外は、法人の対立相手が国家か個人かという区別の観点に基づく)


判例要旨〔憲11〕
法人の人権
4◎憲法第三章に定める国民の権利及び義務の各条項は、性質上可能な限り、内国の法人にも適用されると解すべきであるから、会社は、自然人たる国民と同様、国や政党の特定の政策を支持、推進しまたは反対するなどの政治的行為をなす自由を有する。政治資金の寄付も、まさにその自由の一環である。-八幡製鉄政治献金事件-(最大判昭45・6・24民集24-6-625)
8◎税理士法が税理士会を強制加入の法人としている以上、会員にはさまざまの思想・信条および主義・主張を有する者が存在することは当然に予定されるから、会員に要請される協力義務にも、おのずから限界がある。特に、政党など政治資金規正法上の政治団体に対する寄付は、選挙における投票の自由と表裏をなし、会員各人が市民としての個人的な政治的思想、見解、判断等に基づいて自主的に決定すべき事柄であるから、税理士会の右寄付は、たとえ税理士にかかる法令の制定改廃に関する要求を実現するためであっても、税理士会の目的の範囲外の行為といわざるをえない。-南九州税理士会事件-(最判平8・3・19民集50-3-615)

判例要旨〔憲19〕
9◎本件決議は、被災した司法書士会・司法書士の復興を支援することを目的として、三〇〇〇万円を兵庫県司法書士会に寄付すること、その財源は、受託一件当たり五〇円の割合による特別負担金などをもって充てることを内容とするものであるが、その決議は、司法書士会の権利能力の範囲を超えるものではないし、会員の思想・信条等の自由を根本的に否定するほどのものではない。-群馬司法書士会事件控訴審判決-(東京高判平11・3・10判時1677-22)
10◎群馬県司法書士会が、阪神・淡路大震災により被災した兵庫県司法書士会に三〇〇〇万円の復興支援拠出金を寄付することは、会員の政治的または宗教的立場や思想信条の自由を害するものではなく、公序良俗に反するなど会員の協力義務を否定すべき特段の事情があるとは認められない。-群馬司法書士会事件上告審判決-(最判平14・4・25判時1785-31)