その小太りの男は、戸口から飛び込んできたある男を見て顔をしかめた。
すらりとした体躯に、センスの良い衣服。
黙っていれば、男前なのだが・・・
「おい、オヤジ!!いっちょう、いつものやってくれや!」
ガハハと下品な笑い声をたててヅカヅカと部屋を横切ってきた。
男の名前はジョルジュ。マフィア(当時はマフィアという名前はなかったので、原型だと思ってもらえばよい)の次男坊である。
奥の部屋へと案内した。
いかにも怪しい部屋かもしれないが、水晶ドクロや、東西の珍しい呪術品がところ狭しと積み上げられている。
「えー、旦那、いったい誰を呪えばよろしいんで」
この男には逆らわないほうが賢明である。
両手をもみもみしながら、上目遣いに尋ねた。
ある男の名前を紙に書き込んだ。
「ところで、オヤジ。長い間、ご無沙汰だったじゃないか?これか?これ?」
小指をつきたてられた。
あなたから逃げたくてとは、口が裂けても言えない・・・
「いいよなぁ。貿易商は、いろんな国や街に山ほど女がいてよう。」
「ええまぁ。おかげさまで・・・」
「誰か一人ぐらいよこせよぅ。」
肘で思いっきり小突かれた。うぅっ。
「じゃあな!よろしく頼むぜ。前に頼んだ奴はちっともくたばらないが手抜きしてないよなぁ?」
ん?と顔を寄せてくる。
今にも殴られるのかと、思わず目を瞑ったが、以外にも上機嫌に立ち去って行った。
ほっと、胸を撫で下ろす。
料金を半額に値切られているのだから、手抜きするに決まってるさ。
男は一人つぶやき、ジョルジュと部下の後姿を見送った。
