「もうあの男ときたら!!」
腹が立つ~と手にもっているドレスをベッドに投げつけた。
せっかく気にいっていたドレスの胸元が無残にも破けている。
あの男の暴力には耐えられないし、顔を見るものうんざりだ。
その男の名前はジョルジュ。
夫の弟である。
要するに不倫関係にあるため、相談できる人もいない。
遊びのつもりだったのが、もう、何年も今の関係が続いているのであった。
唯一、妹のマリエティーアだけには相談できるのである。
マリエティーアはわが妹ながら、正統派美人である。
これからが楽しみな10代だが、私のせいなのか、考え方が大人びているというか、無口なわりにキツイ性格である。
「早く別れなさいよ。お姉さま。」
「暴力というか、仕返しが怖いし、切り出せないのよ。」
「姉さんのあの男、ろくでもない奴よ。この間、中庭の回廊で色目を使ってきたわ。」
「で、どうしたの?」
「あかんべぇって、それから思いっきり無視してやった。そしたら、なんて言ってきたと思う?」
「なになに?」
「『本当は気になっているくせに素直じゃないなぁ。そんな気の強いところが好きだなぁ』ですって!」
「最低~っ」
そんな会話を姉妹で盛り上がるのだった。
ジョルジュという男は、容姿は良いかも知れないが、自己陶酔も甚だしい。人の話を聞いているのかいないのか自分の都合のよいように解釈してしまう名人だ。
さっきも、ドレスを急に破かれて悲鳴をあげた途端にニヤニヤしてる。「こういうのも好きなんだな?」抗議の声をあげる前に唇を奪われてうやむやにされてしまったところである。
お姉さまと妹が入ってきた。
ベッドのドレスを目ざとく見つけて片方の眉をあげる。
「あいつね?」
私はお察しのとおりと両手を上げて微笑を浮かべる。
「まだ、死なないの?あいつ。しぶといわねぇ」
「用量どおり、ワインなどに混ぜているんだけど、さっぱり」
「楽しみね。お姉さま」
毒の瓶は誰にも見つからないようにしている。
最近の楽しみは、この毒を盛ること・・・
私は、妹とクスクスと秘密を共有して楽しんだ。
つづく