1996年 ある絵画の前で
私はある絵の前に立ったとき、涙が出そうになった。
イタリアの遠い風景らしい。
もちろん、行った事もないが、懐かしいような、胸がしめつけられるような・・・
当時、社会人として働き始めて1年くらい。
その絵は、手取りで5ヶ月分くらいの値段だった。
しかし、衝動に近い情熱をもって即買いしてしまった。
暗がりで小さな明かりをつけてはその絵を眺める・・・
ため息とともに、
「あの風景の場所に帰りたい」
そんな感覚に陥りながら、眠りにつくのだった。
当時の私は、前世があるのかないのかも判らない、確信もない人間だった。
その感覚が、何なのかもさっぱりわかっていなかた。