実業家の妻である私が、若くて美しい愛人をもってから数年が経っていた。

愛人と言っても、元々はメイドのひとりであったので、立場は以前と変わらない。
当時のイギリスでは、同性愛に対するプロテスタントの教えも、社会的な弾圧も厳しく、堂々と公表出来る立場ではなかった。ましてや、女性の身では…(*_*)

それでも紳士方の間では、誰かが関係を持っているという噂はあちらこちらではきいてはいたが、ライバルの策略に陥れられると、民衆の前で身の潔白を証明しなくてはならない(下半身を晒す)羽目になる事もあったのだ!

私は、関係が周囲に知られることを何よりも怖れた。保身ともいう言葉が、ぴったりくるかもしれない。

おかしなことだが、同時に…彼女を男性に奪われる事も怖れた(´Д`)

彼女がいずれの日にか、男性に心奪われる日がくるかもしれない!そう考えただけで気が狂いそうで、いてもたってもいられなかった。

保身と暗い情熱、架空の男性への嫉妬心…彼女は私の事をどう感じていたのだろうか?

彼女はいたって従順であり、その態度がかえって私を癇癪持ちでサディスティックに変えた!

私は絶えず自己嫌悪に悩まされ、「奥さま」と呼ばせている自分が悲しかった。
内心は、もっと親密になりたい、優しくしたい、ファーストネームで呼んでもらいたいのに、言いだす勇気さえ持ち合わせていなかった(ノд<。)゜。

プライドが邪魔をしたのか、気恥ずかしかったのか?多分、後者だと思う。
純愛は40歳前の女性の心を、乙女にしていた!


調教まがいの事をし、尊大な態度をとっておきながら、乙女のように臆病に愛情を表現できないアンバランスさ。
私は彼女がイク瞬間を除いて、心が潤うことは無かった。どれだけ彼女を抱いても渇きは癒せなかった。それどころか、ますます不安にかられていくのだ。



今となっては、彼女を試すつもりだったのか、それとも、疲れてしまったのかわからないが、ある男性を寝室に呼び付けることを思いついた。

男性の名前は、ピーター。彼は、下男の一人であり、自分の息子達より身近に感じている好青年だった。

私は彼が彼女に好意を抱いているのを知っていた。

私は、2人に命令だと言い、ふたりが絡み合うところをベッドの脇で見下ろした。

彼女から見ると私はどう映っていただろう。ひどく冷酷に引きつった笑みを浮かべていただろうか?

彼女は少し悲しそうな顔をしたかもしれない。ピーターは当惑した様子だったが、私に逆らえる筈もなかった。
私は自分自身にこれでいいのだと言い聞かせた。


気が付くと、彼女の身体はピンクに上気し、華奢な肩が上下している。彼女の視線と私の視線が絡み合った瞬間に、彼女は小さく喘いだ。

私は黙って、最後まで行為を見届けた。
彼女は、「彼」に感じている。呼吸を乱して喘いでいる…

もう、耐えられなかった。私の胸は嫉妬心に張り裂けていた。自分が何の為にこんなことをしたのか、どうでもよかった。

彼女が、彼から逃げて自分にすがりつくとでも思ったのだろうか?彼女を膝まづかせて「こんなことはやめてください」と嘆願させたかったのだろうか?


いつもの癇癪をおこしたのか、冷たく出ていくように言い放ったのか、自分自身で全く覚えていない。
暇を与えて、屋敷から二人を追い出してしまった。


私は、雨がじめじめ降る大通りを眺めながら、大声で泣いていた。

「I love you! I need you!」


自分で壊しておきながら、まるで自分は子供だ。

しかし、その時の私はそうすることしか出来なかった。ただただ、彼女を求めて泣くうちに目が覚めた。


18世紀から21世紀に意識が戻っていく…

枕が涙でぐっしょり濡れていた。

これは、ただの妄想の夢ではないと、直感的にわかった。そして、登場人物の正体も…

その事については、パート3で( ̄□ ̄;)!!