この「なごり」には二つの意味合いがあって、
一つは 昨年の11月、口切(くちきり=茶壺の封を切ること)から使い始めて もう残り少なくなったお茶への名残りと
もう一つは 半年間 馴れ親しんだ 風炉の茶の湯との別れを 惜しむ心です。
近年では抹茶の保存技術の進歩で、一年中、私たちはいつでもパワーあふれるお茶をいただくことが出来るようになりました。
ですから お茶の名残りを惜しむという感覚は残念ながら薄らいでしまいましたが、
風炉や釜、お道具類は華やかなものより 繕い(修理)があったり 侘びたイメージの銘を持つお道具で 名残りの月の 茶の湯をあじわいます。
お菓子は 鶴屋吉信さんの「落柿舎」
実りの秋を祝い、野山を染める草木の紅や 虫の音に心を寄せて、
逝く秋を茶室で堪能いたしましょう。
庵主