彼女は言う。

すっごい不機嫌な態度をとられたり、イヤな事をされてもあんまり気にしちゃいけないと・・・てゆうか、そうゆう部分を見る事が出来て良かったなぁ・・と、そう思わなくちゃいけないそうな。普通なら体裁を整えたり、カッコつけたり、人の目を意識しちゃう。そんな場面以外の、ちょっとカッコ悪かったり、思いっきり人間の煩悩が丸見えになっていたりする場面に遭遇出来る事は、幸せと思わなければいけない。

「私はそうなのよ・・」と言いながら、アンタもそうしなさい・・と暗に言っているのは手にとるようにわかる。

まぁ、言ってる事は解らないではないけれど、単に私の我侭をありがたく思いなさい・・とも聞ける。複雑。

スキならスキって言わなきゃ解らない。
もちろんイヤなことはイヤ。
でも、そんな風に何でも事が進めば世話ないよね。
ちゃんと「好き」って言った事、覚えているのかなぁ
「アナタしか見てない」って言った事、覚えてるのかなぁ
教えてもらった通りに、けっこうちゃんとやってる方だと思うんだけど、なんかうまくはぐらかされちゃってる感じだ。

「ねぇねぇ、メールの返事早いよねぇ~」
「家に居る時、いっつも近くに置いてるのぉ?」
”メールがいつ来てもいいように・・・イヤ・・メールを楽しみに待っているから、いっつもいっつも見てるんだよ”
「でも、見てるとメール打つの、遅いよね(笑)」
”・・・・・・”
「私なんかさぁ、家に帰ると携帯はバイブのままカバンの中にほったらかしだから、鳴ってるのが解らなくてさぁ」
”知ってるよ。家でなくてもそうじゃんか・・”

気持ちって、どう伝えたらいいんだろう。
恋の駆け引きが出来るほど起用じゃないし、けっきょく彼女の我侭を受け入れて、どんな時も彼女の側にいて。
彼女のことだったら、最近は私の方が彼女自身より良く解っているかもしれないよ。

好きと嫉妬はワンセットでついてくるもの。
彼女が誰かと食事をしに行ったり。
誰かと久しそうに話していたりする姿が気になってしょうがない。
普通に考えれば、別にどぉ~ってことない事柄でも、気になって気になってしょうがない。
私は別にそれを訴えるわけでもなく、彼女は自由奔放。
でも、それでいい。私は決して彼女を束縛してはいけないし、する気もない。
でも好き。
だから束縛されるしか、愛情をカタチとして実感できない。
受けとめられない。
愛されたいから愛した時代も確かにあった。
でも、今は・・愛するだけでいい。
無理がないと言ったら嘘になるけど、
でも、それでいい。
K部長は驚くほどにおとなしい。彼女は何だかんだ私に用事をいいつけ、私たちは相変わらず仲良しだ。彼女の右隣のMとは「アンタ口が臭いのよ!」と言う衝撃の事件以降、机の間にはファイルで作ったベルリンの壁が出来ている。そんな状況を見ながら、何のアクションも起こさないKT部長。もしかしてこのギクシャクした重い空気は、みんな私に起因してる?違うよね…。ちょっと軽い責任を感じる。
来月アタマは遅ればせながらのK部長歓迎会。幹事役はなんと私。またまた気が重い。

彼女との付合いが長くなれば長くなるほど、いろいろな彼女の情報が蓄積されてしまう。
好きな人のことは何でも知りたいけど、知ってしまったらしまったで、不幸になる場合だってある。彼女は2ヶ月に一度くらい私と距離をおく時がある。最初の頃は、彼とのデートだと言っていて、生臭い話までペラペラしゃべっていた彼女。最近はあまりそのことには触れず、どちらかって言うと隠してる風にも感じる。でも、ずっと一緒にいるんだから、わからないはずがない。私が気づいている・・ってことは、きっと彼女も十分わかっているはずだ。


”浮気したかどうかって、Hの仕方で何となくわかるんだよねぇ”
”あまり好きじゃないから、1時間以上やられてると飽きちゃって・・”
”頭きてたから、キスする気にもなれなかった”


何気なく話して、聞き流していた以前の会話が生々しく思い出される。


何してるんだろぉ、私・・・と思いながら、彼女のホテルでのデジカメ写真の日付と、彼女は私と離れてる日時をパソコンで照合してみた。こんなことやって何になるんだろぉ・・そうとう女々しいことやっているなぁ~と思いながら、やめることは出来なかった。そして、彼女の会話からの場所情報と写真に写っている部屋の装飾品から、インターネットでホテル名まで調べることができた。間違いない・・このホテルだ。ロビーの椅子、ダイニングの景色、部屋のソファー、スタンドの形、カーテン、ベッド、枕に壁の装飾品。見せてはくれなかったけど、若い頃の記念・・と説得されて、ヌード写真もとってもらったことがあると言っていた。


”彼”とは・・そうゆう関係なんだ。


料金プランをクリックすると、とても普通じゃ泊まれないような高価格。


”彼”のプロファイルは既婚で某一部上場企業の管理職。
それくらいしか知らない・・。
以前、”いいんだぁ~タクシー券さえ何枚か貰えればぁ”と彼女が言っていたのを思い出した。彼、彼・・と言うけれど、他人から見たら、要するに愛人じゃん!と誰でも思う。


部屋の写真を見て、この部屋で彼女が他の男に抱かれているのかと想像すると、胸がしめつけられて・・死ぬほど苦しい。

せっかく生まれたんだから、好きなことしたいよね。
気持や感情を大切に思う私と、モノと現実の彼女。でも良く考えたら、私の感情はうすっぺらで、一番感情が深く強いのは、彼女の方かもしれない。恋愛は普通の人としてね。アンタは彼じゃないんだから・・・と言う言葉を間に受けて挫折するけれど。私たちは何処の誰よりも恋人同士なのかもしれないね。気持に逆らわないで、好きな人といて、好きなことしよう。
せっかく生まれてきたんだから。
何ら変らない日々。
彼女は何ら変らないかもしれないけど、私は日々針のむしろでもある。彼女と結ばれる時は来るのか・・・やっぱり自分はそれを期待しているのか。愛情はいっぱいもらってる。それはわかるけど。
彼女の交友関係に嫉妬しないと言ったら嘘になる。
傷ついた時、楽しかった時、彼女は何でも話すし、
帰って来るところは私のところだってこともわかってる。
でも、彼女が刻んでる思い出は、私と一緒のものじゃない。
それを感じるから・・・最近さみしい。

P506iC0062783766.jpg 突然だった父親の癌発覚。K部長がやってきたこと、彼女との変わらない日々。私の周りでは、ホントいろいろなことがまとめて押し寄せてきている感じです。 父親は始めての抗がん剤投与を終え、後は健康状態を管理しながら20日か28日のインターバルでの投与になる予定。いろいろな情報で心配していた”抗がん剤投与は苦しいのではないか・・”と言う心配も、とりあえずは何も無く終わった。でも、決して不安がなくなったわけではない。これからのことを考えると、やっぱり不安は大きくなるばかり。


一方、職場でのK部長は驚く程におとなしい。自己主張するわけでもなく、誰かと久しくするわけでもなく。
ココの職場に来た本当の意味はわからないものの、精気を吸い取られたサラリーマンの姿の様に見えてしまう。会話をしたのは2~3度だけ。通勤が疲れる・・と、近くにタバコを売ってる店はないか・・と、それくらい。
仕事の話ではまず無関係に毎日が過ぎている。でも、あのK部長の本質を知っている私は、このままおとなしくしているわけはないな・・と、常に警戒態勢は緩めていない。なにより、斜め前に座っている威圧感だけで、ちょっと気が滅入る。



最近ぼぉ~っといろいろなことを考える。
彼女と私は相変わらずの仲良しこよしなんだけど、職場では同じ視線にK部長の姿も飛び込んでくる。
表面的な好きとか嫌いとかは別にして、彼女との付き合いよりも、K部長との付き合いの方が、遥かに深いことを否が応でも実感せざるを得ない。何も言わず何も干渉しないで、ただおとなしく存在だけしているK部長。一方相変わらず女王体質の彼女を同じ空間で見ていると、私の心情は複雑です。
性的な繋がりと、精神の繋がりと・・もちろん私は精神論者ではあるけれど、今になって、肉体の関係ってなんだろう・・と深く考えさせられてしまいます。

私のコンピュータはけっこう緻密だったはず・・・。それが最近壊れた。私は何を求め、何を到達地点に考えていたのだろう。嫌いなもの、大切なもの、私は今、全てを失ってしまったのかもしれない。失ったあとの哀楽は、誰にもわからないよね。
臨時の朝礼でK部長が紹介された。職制は担当部長。私は無視も出来ないので、年齢はアナタが上だけど、職場では先輩よ。仕事も違うし・・・と言う微妙、且つ緻密に計算された挨拶を交した。彼女はと言えば、完全戦闘体制。KT部長から「庶務として何か伝えることとかありますか?」と振られた時も「ありません!全て社内規定に書いてありますので、まずはそれを読んで下さい!」とピシャリ。やっちゃったぁ~と思ったら、彼女は冷静に「差別してる訳じゃないよ。私は誰にでも意地悪だから」と。早速火をつけちゃった。やれやれ。