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昨日、なにげなくつけたままのテレビを見ていたら、未来の自分に会いたいか、過去の自分に会いたいかという話をしていた。
会う必要があるかしらと、別にどちらにも会いたいとは思わないわと、そんな風に思っていたけれど、
今朝公園を散歩しながら、ああそうだ、20年前の私に会いに行こうかと思った。
20年ほど前、子供達の前で泣きながら梅干しのおにぎりを握っていたという私に。
「これしかなくてごめんね」そう言って泣きながら梅干しのおにぎりを握っている私の背中を覚えていると、ある時突然、息子に言われた。
そんなことあったかしらと記憶を辿るのだけれど、どうにも思い出せない。
ただ、泣きながら大根の葉を刻んでいた日のことはよく覚えている。
あと三日、あと三日でお金が入る。
それまで、この子達になにか食べさせなくちゃ。
大根の葉で何を作ったのだろう。
ただ、冷蔵庫はもう空っぽだった。
トントンと包丁の音に合わせるように、あと三日あと三日、頑張れ頑張れと、呪文のように唱えていた。
あれから20年と少し。
今日娘は久しぶりにひとりになって、映画を見に行った。
休日だった私と息子は孫を預かって、公園へ散歩に出かけた。
嬉しそうに出かけて行った娘と、落ち葉とはしゃいで遊ぶ孫と、それを見守る息子。
まるですべてがはじめから、そこにあったような幸福な景色。
寝ずに働いて何度も過労で入院したことも、それぞれに苦悩と闘ったことも、人並みの親子の対立も、
まるでなにもなかったかのような、目の前の穏やかな景色を見ながら、
ふと、昨日のテレビの問いを思い出した。
過去に戻れるとしたなら。。。
泣きながら梅干しのおにぎりを握っていたという私に会いに行こう。
そしてそっと背中を撫でてあげよう。
この先に待ち受けている幸福は、知らない方がいいだろうと思う。
私はきっと知らないから頑張れたのだと思うから。
ただそっと、大丈夫だよ、大丈夫なんだよと、背中を撫でてあげたいなと思った。
まだ30歳そこそこの私の背中を。
散歩の途中で、雨が降ってきた。
でもきっと虹が出るよと言いながら歩いていた。
きっとでるよ、本当にでるよと何度も言いながら。
そうしたら、本当に虹が出た。
綺麗に二重に。
人生みたいだなと思った。
虹は出る。
本当にでるのよ。