必死に説得したものの、決断するのは本人だし、すぐにわかった!じゃあ全摘する!なんて簡単に決められることでもなく、その日はうちで夕飯を食べて帰宅しました。
私は私で、トモの生き様や性格を考えたら胸を切ってでも生きてほしいなんていうのは単なるエゴかもしれない…なんて考えたりして、その日はなかなか寝付けなかった。
トモは息子を産んだときもそうなんだけど、自分がこうすると一度決めたらテコでも譲らない性格。
悪く言えばただの自己中なんだけど、それによって周りが迷惑したり周りに負担をかけたりしても本人は気にしないタイプ…
それが許される環境で、周りも甘やかしてくれる人ばかりだったから最期まで変わることはなかったな。(私も甘やかしていたうちの1人なんだろうけどね)
そんな性格だから、もし「胸を切るくらいなら死を選ぶ」と言ったら誰も説得できなくなる。
本人が言うには、切ったって生きられる保証はない。それなら綺麗なままがいい。胸がなくなるなんて考えられない。
…ごもっともなんだよね。
100%なんてないんだから、切り損になったら嫌だよね。
胸って、若い頃は特に大切な部分だし。
彼女の気持ちも汲みたい、でも親になったんだから責任だってある。可能性があるなら生きるっていう道を選ぶべきじゃない?と思った。
トモがなんでここまで切るのを嫌がるのか?それには理由がありました。
トモのお母さんも若い頃に乳がんを患い、両胸を摘出しています。
それを知るまでは、スレンダーで短髪でボーイッシュなお母さんだとずっと思ってたけど、そうじゃなかったんだよね。
胸がぺたんこなのは貧乳だからじゃなく、摘出したから。
メイクも一切しない人で「胸もないのに色気づいてもねぇ」なんて笑って言ってたけど、きっとそうじゃない。
トモのお母さんの深い気持ちまではわからないけど、その姿は兄妹を2人育て上げることを優先した結果なんだろうなっていうのはなんとなくわかった。
朝から晩まで働いて、貯金が趣味なんていうのも自分の身に何かあったときのために残してあげたいという気持ちからだったんだろうね。
トモはそんなお母さんに対してずっと反発していて…
・小学生の頃は学童保育に行くのがとても嫌だった
※当時はまだ専業主婦がほとんどで、共働きは珍しかった
・お弁当羨ましい、うちはいつもお金渡されるだけ
※これに関してはトモのママは料理が苦手だったから
・あんじのお母さんはいつも綺麗にメイクしてて羨ましい、うちのママなんていつもすっぴん、髪も短いしおしゃれしたとこ見たことない
こんなようなことをいつも言っていて、トモのお母さんも申し訳ない顔をしていいなりになるだけだった。←今思うとこれがよくないよね
そんな親に反発する気持ちもトモの中では全て
お母さんが乳がんになって全摘したからこうなった
っていう構図になっていたんだと思う。
真実はそうじゃないとしても、彼女の中ではそれが真実だったんだよね。
自身が乳がんの宣告を受けて、胸を切るのを嫌がったのはここから繋がってたんじゃないかなと私は思った。
それでもね、生きてほしいんだよ。