中国で4月7日から公開されたジャッキー・チェン主演の《龍馬精神 Ride On》、世界各地で上映が決まる中、香港での上映の話がなかなか出てこなかったので、香港のお隣、深圳に見に行こうと決めました。近年の香港は、《絕地逃亡 スキップ・トレース》も、《神探蒲松齢 ナイト・オブ・シャドー 魔法拳 》も、《龍牌之謎  レジェンド・オブ・ドラゴン》も結局上映されなかったというジャッキー・チェン砂漠なので。 深圳に行こうと決心してから、香港でも上映されるという話が出てきたんですが、もう行くつもりになってたし、香港はオリジナル版(国語版)をやらない可能性があると思い、先週、4月11日に見に行ってきました。

 

コロナ以降、日本人の15日ビザ免除が停止されているので、香港のお隣の深圳に行くには、深圳特区ビザを取る必要があるのですが、これが、なかなか時間がかかる。羅湖の香港側のイミグレを超えて、深圳のビザ事務所についたのが9時半ぐらい、それから、ビザが発行されて、深圳の街に出て来たのが11時55分ごろ。ビザ申請とイミグレで2時間半かかってしまった。昔は深圳特区ビザなんてお金払って、10-20分で発行してもらえたのに...

でも、私はまだラッキーだったほう。羅湖のビザ事務所の申請受理能力に限りがあるようで、人が多い時は午前で早々と受理停止になってしまう日があったり、必ずビザが取れるとは限らない状況。この状況では、深圳も、そんなに簡単に行ける場所ではなくなったなあと思う。

相互主義が原則のビザ免除、今の中国からすれば、日本が中国人にビザ免除してないのに、一方的に中国から日本人に免除する理由はないかもしれない。今や貧乏国家の日本の国民に、どんどん中国に観光に来てもらいたい理由もないだろうし。でも、ぜひぜひ日本パスポートのビザ免除復活してほしい。映画やコンサート鑑賞で、気軽に行けるようになってほしいなあ。

 

やっとの思いで、羅湖のイミグレを超えて撮った写真。11:55撮影

 

映画は、万象城というショッピングセンターの中の万象影城で鑑賞しました。羅湖から地下鉄で行けて、近くて、大画面で、音響がよさそうなところがよかったので。さらに、イミグレの時間が読めず何時に到着するかわからないけど、出来れば2回見たかったので、上映回数が一日中まんべんなく多いところと思い、ここにしました。 建物が1期と2期にわかれていて、映画館は1期にあるのに、私は最初、2期の方に入ってしまって、映画館の場所を探すのにちょっと戸惑った。

 

 

13:20と15:40 の2回鑑賞。4月11日は《龍馬精神》は万象影城の8号院での上映が中心で、8号院はTHX認証院だったので、なかなかよかったです。音がドルビーサウンドで、あちこちから立体的に音が聞こえてきました。

 

でも、高級ショッピングセンターの中でお値段もすこし高め。中国は映画のチケットはネットのチケットシステムで買うのが当たり前になっており、ネットで買うと、劇場窓口で現金払いする値段の半額以下なのですが、私はWechat Payの中国版の支払いシステムが使えなかったので、窓口現金価格で、109.8元(約HK$125)でした。価格が倍以上違うので、売り場の女性も「ネットで買った方が安いよ」「ネットで買えないなら、会員カード発行する?中国の電話番号だけで発行できるし、映画割引になるよ」といろいろ気を使ってくれたのですが、中国の電話もないし、まあ仕方ない。でも、私は香港でも、ジャッキーの映画を見る時は、少しでもボックスオフィスに貢献しようと、わざと無料招待券や買一送一(1人の値段で2人分)などの大きな割引価格を使わずに見ることもあるので、THX認証の箱で、この値段なら、香港とあまり変わらないので、許容範囲。

 

私は、今でもコロナ防疫措置は出来る限りとっているので、なるべくマスクを外して不特定多数と外食しないようにしています。でも、深圳まで来て映画を見るとなると、長時間何も食べないわけにもいかない。どうしようかと思ってたら、13:20の上映回は私がチケット購入した時、私一人だけだったので、これなら、映画館で食べた方が、防疫的にはいいなと思って、映画館の売店でポテトチップ買ってパパっと食べた。 でもこのポテトチップ、さすが高級ショッピングセンターの中の映画館の売店だけあって、60g入り、RMB28(約HK$32)もした。中国の物価、高くなったねえ。

 

入場して席について、10分近く誰も他に入ってこず、私1人でした。ポテトチップスを急いで口に詰め込みながら、「このまま、私一人でTHX院貸し切り?」と不安になってたら、本当に上映時刻ギリギリに2組4人が入ってきて、観客私入れて5人、貸し切りは免れました。でも、中国の映画館、平日の昼間とはいえ、まだ新作公開一週目で、こんな入場率低くても採算とれるんだろうか。《龍馬精神》の興行収入の推移をみてても、土日で入場率5%前後しかない。中国のファンによれば、一応、この時期の公開映画としては、悪くない成績らしいので、連休や正月や夏休みでもない時期だと、そんなものなのかな。

 

 

さて、《龍馬精神》の感想ですが...

 

私はこの作品、第1弾の予告映像を見たとき、ここ10数年のジャッキー出演作の中で、《英倫對決 ザ・フォーリナー》に並ぶ脚本がしっかりした良作なのでは、と、想像しました。さらに、この《龍馬精神》の楊子監督が撮った中國電影頻道の映画チャンネルの宣伝フィルム《刻在時間裡的美好》の雰囲気の良さから、この監督はもしかして、すごくいいかも、この《龍馬精神》は、高齢期のジャッキーの代表作になりえる可能性がある?と、期待したり...

 

その楊子が撮った、ジャッキー・チェン主演の、映画チャンネルの宣伝フィルム

(これは《龍馬精神》とは直接関係ない映像なので、映画のネタバレではありません)

電影頻道2023宣傳片

 

しかしながら、3月31日の北京での《龍馬精神》プレミア上映以降、一部すごく感動してる人もいたという話も聞いたものの、ジャッキーのファンが辛口の感想だと聞いたので、「これは誰もが絶賛するような作品ではないのね」と自分の期待する気持ちを落ち着け、私は、心の準備をして見に行きました。

 

私の感想は、本当に、正直に、「普通、まあまあ」です。私は、前もって覚悟して見に行ったので、大きな失望はしなくてすんだけど、ファンが辛口の感想なのが、「まあ、この出来だとそうなるわなあ」という感じ。すでに鑑賞したファンに私の感想を言うと、だいたい皆、不満点や指摘する内容が似ていて、「そうそう、そうなのよ」という感じ。すごく駄作だとは思わないし、退屈したり、眠くなるほどつまらなくはないけど、すごく面白いかと言われると、そうでもない。見て損するほど酷くもないけど、傑作ではない。

 

もともと、私も、この映画がアクション大作だという期待はしてなかったし、それを期待する映画でもないと思う。でも、中に挟みこまれてるアクションシーンについては、それなりに良かったと思う。アンディ・オンとのアクションは、昔の香港映画のような、「殺気がないけど、工夫があって楽しい立ち回り」という感じで、好ましく見れた。もちろん、顔が出ない部分は、スタントマンのダブルだし、その所為か、ちょっとカット割りが多い感じはしたけど。でも、ジャッキー・チェンスタイルのアクションという感じで、悪くないと思う。

 

演技については、私はジャッキーは演技力がある人だと思っているし、今回もセリフ回しや表情などの表現は悪くないと思う。共演者についても、役柄にあっててよかったと思う。漫才が本業の郭麒麟、台詞回しや間合いも好ましい。劉浩存については、中国ですごくアンチが多くて、演技も下手だという酷評を見る。これだけ嫌う人が多いのは、お母さんのダンス学校の事故の影響なのか?劉浩存が出てるだけで映画見たくないという書き込みも多い。私は、中国版、裕木奈江?って思ってしまった(例えが古い)。でも、少なくとも、劉浩存の可愛さは、この役には合ってると思ったし、演技力自体は特に問題ないと思う。

馬の演技もよかった。CG合成とかもあると思うけど、これだけ馬に表情やしぐさを持たせるのって、撮影大変だったろうなあと思う。

 

では、何か問題で、こんなに「不過不失(良くもなく悪くもなく普通)」の映画になったか。

大きな原因は、脚本だと思う。ネタバレしないために詳しくは書かないけど、人間と馬との関係、父と娘の関係、スタントマンのこと、詰込み過ぎで、話が散漫で、焦点がなく、3つのテーマがすべて中途半端で、どれも描き方に深みがない。テーマを1つか、せめて2つに絞って、もっと深みのある脚本だったら、名作になりえたんじゃないかと思うと、もったいない。

個人的感想としては、私は決して劉浩存のアンチではないし、彼女の演技も悪くないと思うし、娘役に彼女を起用したこと自体は、選択肢としてありだと思うけど、ただ、この映画の全体像からすれば、父と娘のストーリーラインは余分だったと思う。

 

それに、予告編で、ネタバレしすぎと思う。私は最初の予告編と第2弾の予告編は見たけど、、第3弾と第4弾の予告は見ないようにしていた。それでも、いろんな宣伝の中で、見たくなくても目にしてしまうシーンも多かったので、映画本編で初めて見るシーンは少なかった。映画見終わってから、改めて全部の予告みたけど、1から4の予告編と主題歌《真心英雄》のMVを見たら、「これほぼ、映画の面白いところ全部やん」って感じ。

さらに、問題なのは、予告編の編集、天才的だと思う(皮肉)。予告編はテンポのいい音楽と美味しいところを凝縮したカットで、同じシーンでも映画で見るより、予告編で見る方が面白い。「あれ、予告編でこのシーン面白かったのに、映画で見てもいまいち...あれ?」みたいなところがあった。

 

まあ、いろいろあるけど、でも、そんなにひどい作品でもないし、毒がなく、家族や友達、それも老若男女が安心してみれる作品だとは思う。 ただ、日本公開時、家族や友達を誘おうと思ってる人は、相手に予告編見せないほうがいい。そして、予告編見てしまった人も、日本公開までに忘れたほうがいい。 まあ、完全に忘れるのは無理だろうけど、予告編を何回も何回も繰り返しみて、脳裏に焼き付けないようにね。

日本の配給会社も、日本で宣伝するとき、中国の予告編4バージョン、そのまま全部流すような愚策を取らないでほしいです。

映画の予告編もみず、あまり大きな期待をせず、暇つぶしぐらいの気軽な気持ちで見た方が、素直に普通に楽しめると思う。

 

なお、中国で公開が始まって以降、微博の《龍馬精神》公式で、予告編だけでなく、最後のNG集全部、さらに、 「正片片段上线 (本編カットをアップ)」として、本編の数分の映像を抜き出して、そのまま投稿されてます(今ところ、2シーンかな)。 こういうのは、映画見た人が、映画の余韻に浸るのにはよいけど、見てない人が、本編のままのものを何分もみたら、本当に映画館に見に行く意味なくなるよ。みんな、映画見るまでは、見ないようにね。中国の映画配給会社の宣伝部も、ジャッキー・チェン作品としては、もう少し興行収入が伸びてもらわないと困る...と必死なんだろうけど、ちょっと考えろよ、という感じがする。

 

映画の長さは126分とジャッキー映画としては、ちょっと長め。マレーシアは、国語版と広東語版の両方上映されてるようです。でも、中国は、広東省ですら、広東語版の上映はありませんでした。香港が広東語版の上映になるんだろうなと思う。でも、この作品は、役者本人の声が使われているオリジナル国語版がいいと思うので、香港も両方のバージョンやってほしいなあ。両方を見たマレーシアの記者も、国語版の方がお勧めですと書いてたし。もちろん、ジャッキーファンとしては、彼の声は、両方本人の声なので、両方のバージョン見れれば、一番いいだろうけど、どっちか一つ選ぶなら、国語版だと思う。私も、マレーシアの広東語版予告は見たけど、郭麒麟みたいに、漫才師が本業の人の声を、広東語声優に吹き替えるのは、本当に理想的でない。

なお、オリジナル国語版でも、広東語の会話も出てきます。

 

2024年3月追記:

《龍馬精神》の邦題が『ライド・オン』となり、5月31日から日本での劇場公開が決まりました。

皆さん、ぜひ劇場へ足を運んでください。

香港は結局、この映画、劇場公開はありませんでした。メディアの多様化で、さまざまな映画が配信やディスクで見られるようになった現代、劇場で映画が上映されるというのは、そんなに当たり前のことではないのです。ジャッキー・チェンの映画が大きなスクリーンで見られるその機会は大切にしてくださいね。