日本でも2023年1月6日から劇場での公開が決まった『カンフースタントマン 龍虎武師』、アクション映画ファンだけでなく、香港映画が好きな人には、必見の映画です。
さて、この《龍虎武師》、香港では昨年の2021年10月下旬に2週間ほど本当に小規模での上映でした。上映回数も少なかったけど、その分、毎回、この映画に関係のある人が、ゲストで舞台挨拶をしていました。私が行った10月16日は元武と錢嘉樂、10月26日は徐小明がゲストでした。
さて、この映画、香港アクション映画のレジェンドの一人、ジャッキー・チェンの映画のアクションシーンも使われていて、ジャッキーファンも必見の映画なのですが、ただ、この映画のインタビューにはジャッキーは出てきません。(マースやスタンリー・トンは出てきますが)
日本の映画紹介でもジャッキー・チェンが「アーカイブ出演」となっているのは、このためです。
21年10月30日の香港上映時の錢嘉樂と陳會毅の舞台挨拶の時の映像を、Youtubeにアップしてる方がいますが、それを見ると、その時に、観客からの質問に応じて、錢嘉樂が、この映画にジャッキー・チェンが出ていない理由を話しています。私が見に行った日の舞台挨拶では、この内容は話題に上がらなかったと思います。ざっとその部分の内容を紹介します。
映像の2:15~3:40ぐらい
観客からジャッキー・チェンが出ていない件についての質問に対して
錢嘉樂の回答:
実はその問題は答えたことがある。
実は最初のバージョン、宣伝フィルムにもジャッキー(成龍大哥)はいた。ジャッキーはとても心配りをしてくれ、彼は北京にいるから直接クルー全体で撮影し終わってから、私にフィルムを送ってくれた。
でもいかんせん、この映画は記録映画で、利益がほとんどないとは言え、撮影して自分達、業界内部で楽しむだけにしておく理由はない、だからある種の販路、例えばHBOやNetflixに販売を考えて、でも、ジャッキーはいかんせん国際級の人物で... 私も彼と何度も電話で会議したけど、でも問題は彼のアイコンはそのまま全世界に及ぶので、法律チームもアメリカに行って、わぁ~、とても煩雑で。それで、技術的問題で、最後はどうしようもない。上映時期のことがあり、それで、監督魏君子も... 第1バージョンはジャッキーのあるバージョンだったのですが、仕方なくジャッキーをカットして上映した。
だから、ここで、ジャッキーにはありがとうと言いたい、彼はこの映画に一緒に貢献してくれたのです。
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ということで、ジャッキーもこの映画に出てるフィルムが実際は存在しているけど、権利上の問題でカットされてしまった、ということらしいです。
この内容を錢嘉樂が話している時、陳會毅は発言はしていませんが、「成龍大哥好有心(ジャッキーはとても心配りをしてくれて」というところで、「うんうん」とうなずいているし、おおよそ、そういう背景・理由があったのは、本当なのではないでしょうか?
中国では記録映画をお金を出して映画館で見るという感覚が無い人が多いみたいで、実際、中国では興行的には失敗してるし、中国で有料配信が始った時も、「なぜ記録映画にお金取るの」というコメントを結構見ました。たぶん、こういうものは、テレビなんかで無料で見るものという感覚なんでしょうね。そういう市場において、繁雑な権利関係をクリアしてまでジャッキーのシーンを入れる価値はないだろうから、まあ、カットも致し方ないかな。
でも、日本なら、なんとかならなかなあ。映画館ではドキュメンタリー映画として完成したものを、そのまま日本でも上映するほうがいいと思うので、劇場版としては、中国や香港と同じバージョンでいいと思うけど、例えば、日本版のディスク発売の時、ディスク特典で、「劇場未公開シーンのボーナストラック」としてジャッキーのインタビューシーン入れてくれないかなあ。結局のところ、繁雑な権利関係をクリアするに値する市場があれば、可能性ありそうな気がするんだけど。私も、ジャッキーのシーンが入るなら、日本版のディスク購入するよ。
とにもかくにも、この映画が日本で理想的な興行収入になりますように。映画の好みは人それぞれだと思うけど、この映画は、香港映画に興味ある人ならば、少なくとも「見て損した」となる人はいないと思うのよね。それどころか、香港映画が好きであれば、好きであるほど、いろいろ感慨深かったり、香港映画のすごさを感じたりすると思う。龍虎武師の歴史=香港映画の歴史と言っていいほど、香港映画において、武術指導やスタントマンというのは、とても重要な要素だから。
龍虎武師のドキュメンタリーであるこの作品、絶対みなさん見に行ってくださいね。