36 夏の恋人2
彼女は後30分だけ、彼を待とうと思った。
30分なんて普段の彼女ならとんでもない、1分でも待つのはイヤなのだから。
それなのに、なぜ?
こんな暑い真夏の炎天下の街角で待ってるのかしら?
彼のことを信じてなんかいなかった。
30分経って、彼は現れなくて、連絡もなければ永遠に彼と別れる決心ができる。
分析好きな彼女の計算からすれば、彼と彼女が一緒にいてプラスになることなんかほとんどない。
彼女を知る人は、「君には似合わない」と冷静な忠告をした。
「君は彼といて、何が楽しいの?」
そう質問されたときに、彼女は答えをみつけることができない。
学ぶことはなかった。
教えることもできない。
それなのに、なぜ一緒にいるのだろう?
自分に罰ゲームを与えているかのように、二人でいる空虚な時間はつらい。
彼といると、彼女は自分が生きてきた時間を無意味なものに感じてつらいのだ。
二人の間に横たわる生きてきた時間の差がニュアンスの違いを伝えることができないジレンマ。
今日だって、今だって、こんなところに立っていたら日焼けするじゃないの。
それでも暑くない顔をして、汗ひとつかかないで背筋を伸ばして彼を待つ。
わかっているの。
彼はわたしを愛してなんかいない。
わたしも彼を信じてないから愛せない。
彼女は誰かの熱い視線を感じていた。
だから、余計に背筋を伸ばす。
そして冷たい笑顔を装う。
わたしを後ろからみつめていて。
上手に別れのシーンを始めるから。
もう決心しているの。
そのシーンが終わったら、あなとの恋のシーンが始まる。
エピローグ=プロローグ