あるアニメのお話です。
絵コンテが遅れ、連鎖的にモデルのリリースが1ヶ月以上遅れ
ダビング時(出来上がった映像素材と台詞や効果音などの音付けをする作業。)に
ラフのアニメーションすら出来ていないという非常事態に差し掛かっていました。
制作途中にプロデューサーが逃げ、制作進行がダウンし、めまぐるしく窓口の人間が変わり、次々と犠牲者が出る様は、死屍累々といった様子で、まさにデスマーチと呼ぶに相応しい状況でした。
罵声が飛び交う打ち合わせなんて初めてでした。
そんな中、下請けのCG会社のただの窓口役の私の携帯に、クライアントの偉いプロデューサーから電話が掛かってきたのです。
「ますさん、どうかこの事態を何とかしてもらえないでしょうか・・・」
もう、万策尽きて、打つ手が無くなったんでしょう。
とても申し訳なさそうな声だったのを憶えています。
私は、その時、どういうわけか「チャンス」だと思いました。
誰もが逃げ腰の今なら全てを任せてもらえる。
自分が上に立って全て自分の意思でプロジェクトを動かせる。
それはそれは、疲れも吹っ飛ぶくらい興奮していました。
会社員にして、私個人に依頼が来た初めてのことですから。
残っている手段は力技のみです。そのプロジェクトはその後、3週間くらい泊り込みでまさに起きている時間は全て働いているような状況で黙々と作業し、それでも、遅れに遅れ、小刻みな再V編を2回くらい繰り返し、何とか放送事故は防ぐことが出来ました。
それ以来、その偉いプロデューサーはその後、何かあると仕事を私に相談をするようになりました。これが、会社を辞めても、1人でもやっていけるという希望のきっかけになったのです。
なぜ私が、そのような行動に出られたかというと、1人の先輩の偉業に起因します。
当時、その先輩は、CMか何かの案件で同じような状況になり、オフィスに転がる死体の山で、何日も睡眠をとらず、部下がほぼ死亡している中、冷静に生き残り兵に指示を出し、顧客の矢表に立って戦ったのです。
1人成果を上げ納品した先輩は神々しく見えたものです。
その先輩は、その後、あちこちから、お声が掛かるようになり、引きぬきの誘いもありましたが、起業していきました。
私がここで学んだのは、仕事は「信用」が全てで、デスマーチはある種の「信用力アップ」のボーナスステージだということです。
ピンチはチャンスという言葉を聞いたことがある人も多いと思いますが
具体的にイメージ出来ない人も多いと思います。それがイメージ出来るようになったというのも大きいです。
★上記のは一例ですが、最悪の事態というのは、見方を変えてみると、最高になるようなケースもあります。
大きいことで言えば
・会社が潰れる⇒転職のチャンス
・入院するような事故⇒ゆっくり考えられる時間をつくれるチャンス。
小さいことで言えば
・尊敬する上司が次々辞めていく⇒自分が主導権を握りリーダー経験を積むチャンス
・仲のいい同僚が次々辞めていく⇒人脈が外に広がるチャンス
・新人が次々辞めていく⇒仕事が重くなった分、給料交渉のチャンス
★デスマーチを活用する方法、まとめます。
視点を変えることです。想像力を駆使し良い面を見出すのです。
そうすることで、地獄の状況から活路が開かれます。