(脱パチ990日目)
この物語は時空のひずみで突然現代(令和)に
タイムスリップさせられた江戸の町民「玉五郎」が、
本人の意思とは関係なく、ギャンブル依存に苦しむ
人々を救っていくという、爽快フィクションストーリーである。

【前回のあらすじ】
長屋で昼食(ちゅうじき)の蕎麦をすすっていた玉五郎(たまごろう)。
突然の地震ような揺れに驚き立ち上がり、外に出ようとわらじを履いたとたん、
気がついたら見知らぬ場所に立っていた。
「うわっ。なんだなんだ?何が起こったんだ??」
その場に呆然と立ち尽くす玉五郎。
一本だけ口からはみ出ていたそばを、
思わず「ちるる」と音を立ててすするのであった。
注※すみません前回存在しません。
「いったいここはどこでい??」
まったくの見知らぬ場所で、玉五郎が目を丸くして立ちつくしていると、
まわりの人々がくすくすと笑いながら通り過ぎて行った。
ちょんまげの着物を着た玉五郎を見て、テレビの撮影か何かと思ったようだ。
そこはどこか大きな川の土手近くのようであった。
「多摩川」という看板が遠くに見える。
犬を散歩させていた人が、少し怪訝な顔をして玉五郎を見た。
犬はへっへっとしっぽを振って玉五郎に近づいたが、
飼い主にひっぱられるように反対方向へ連れられて行った。
「・・・・地面が・・・・固え。」
玉五郎がよろよろと歩きだすと、
次の瞬間、「きゃああ!!」と女性のつんざくような悲鳴が聞こえた。
「誰か、誰か助けて!子供が、子供が溺れてるの!」
思わずその悲鳴の方向を見ると、
川の中で、子供がバシャバシャと音をたてて、
もがいているのが見えた。
「いけねえ!こいつは一大事だ!」
とっさに玉五郎は川に飛び込んだ。
少し藻に足を取られたが、水中で何とかうまく身体を立てることができた。
川は思ったより浅く、玉五郎が立ち上がると足がついた。
幸い、岸からまだ近くにいた子供に近づいてその服をつかむと、
無我夢中で川岸へひっぱりそのまま川岸の上へと抱え上げた。
「ひろゆきー!!ひろゆきー!!!」
水から上がり、ふうと一息ついた玉五郎に、
大声で子供の名を叫びながら、母親らしい人物が近づいてきた。
それに気づいた子供がうぎゃーと大きな声で泣き始めると、
母親もまたうぎゃーと泣きながら、子供を抱きしめた。
「ありがとうございます!!ありがとうございますうう。」
そんな騒ぎを聞きつけ、どやどやと土手の周りに人がたくさん集まってきた。
ずぶ濡れの子供と玉五郎。
そして玉五郎に、ひたすら礼を言い続ける子供の母親の姿を見て、
皆、口々に噂をしはじめた。
「どうしたの?」
「なにがあったの??」
「なんか子供が溺れたらしいよ。」
「でも誰かが飛び込んで助けたんだって!」
そして、最終的には、
「時代劇の撮影中だった役者さんが溺れてる子供を助けたらしいよ?」
という話にまとまっていった。
「子供を助けたんだって、すげえ!」
「役者さんえらい!!」
「役者、よくやった!!」
「役者いいぞー!!」
いつの間にか、まわりから玉五郎に惜しみない拍手が送られていた。
その拍手にとまどいつつも、玉五郎は、取り敢えず笑顔で周りに会釈した。
「ありがとうございます!本当に。
本当にありがとうございます!!」
母親はまだ何度も何度も礼を言い続けていた。
玉五郎もまた、何がなんだかわからず、
笑顔でどうもどうもと大衆に頭を下げ続けた。
どこからか、
「おい、誰か、タオルと何か着れそうな服を持ってきてやれ。」
という声が聞こえた。
そんな騒ぎを見ていた通りすがりの男がいた。
彼はその時ふとこう思った。
「こんな時代でも、人を助けるやつがいるのか・・・・。
世の中まだまだ捨てたもんじゃないのかもな。
・・・よし!!俺も。
パチンコなんかやめて真っ当に生きるぞ!!」
男は何かを決意したように、街の中へ消えて行った。
河原ではまだ多くの人が玉五郎に惜しみない拍手を送っていた。
こうして玉五郎は、何がなんだかわからないうちに、
溺れた子供と、一人のギャンブル依存の男を救ったのだった。
ありがとう玉五郎。
天晴、玉五郎。
そしてどこ行く玉五郎。
【第二話に続く】
