あなたはマジックを見て、そのタネを知りたいと思いますか?
一流のマジシャンが起こす不思議な現象には、とても「タネ」があるようには見えません。
でも、マジックですから必ず「タネ」はあります。
〝あるのに見えない〟んです。
どういうことかご説明しましょう。
不可能に思える現象…それを起こすためには経緯が必要です。
原因があって、初めて可能となります。
でも、それが「1足す1は2」という直通のお話になっていないんですね。
だから「????????」ってなります。
原因や経緯はみえないところで錯綜していて、でもそれらは確実につながっていて、確信犯的に重ねたことが思いがけない場所に現出する。
でもそれは、粛々と「そうなるように」積み重ねてきたものに基づいている。
積み重ねているものは、それが現象のプロセスにおいてどんなに無意味に見えていようと、思いがけない結果を生み出すわけです。
筋トレなんかもある意味、そうです。
端で見ていると訳のわからない無目的な動作が繰り返されるわけですが、それによって皮膚の下の筋肉が育ち、結果的にスポーツの試合という合目的的な場所で「因果」として働いたりします。
その関連性を外から目で見ることは、ほとんど不可能と言っていいでしょう。
ココで培ったここの筋肉がボールを投げている!というのは容易に見分けられないのです。
でも、そうなってる。のですね。
積み重ねてきたことと、それが引き起こす、意外なこと。
その間の糸を解きほぐすのは、とても難しいことです。
マジシャンが何を意図して何をやってるのか理解するためには、相当の洞察力と「気づく」ための柔軟な思考力を養わなければなりません。
その作業を楽しいと思えますか?
純粋に不思議を楽しむ側に回った方が、何倍も賢くてお得だと思いませんか?
欧米ではマジックがエンターテイメントとして確立していてレベルの高いマジシャンが多く、それに伴い観る側であるお客さん達の質もとても高く紳士的です。
タネを暴いてやろうという無粋な考えの観客はほとんどいません。
鮮やかなマジックを見ると「Great!」「amazing!」「awesome!」などと素直に声に出して喜びます。
素晴らしい演技には惜しみない拍手や歓声、スタンディングオベーションを贈ります。
勤勉さを武器に最先端科学の分野で他国をリードし続ける日本ですが、「エンターテイメントを楽しむ」という分野においては欧米に遠く及びません。
昔はステージにマジシャンが登場すると、必ずといっていいほど観客に向かって「Ladies & Gentlemen(紳士淑女の皆様)」と声を掛けていたでしょう。
日本では死語になりつつありますが、英語圏では今でもしっかりと生きています。
周囲への気配りが行き届いた言動と、楽しむべき時は思い切り楽しめる賢さ…
それらを兼ね備えた本当の紳士淑女が、現代の日本に一体どの位いるのでしょうか?
食生活や少年犯罪ばかりが欧米化している日本人にとって今一番必要なのは、質の高いエンターテイメントの文化だと思います。
エンターテイナーのレベルばかりが上がっても、観る側の質がそれに追い付かなければ文化として発展することはありません。
冒頭でも質問しましたが、もう一度お聞きします。
あなたはマジックを見て、そのタネを知りたいと思いますか?
知的好奇心を満たす目的でタネを知ると、その後マジックへの関心が薄れてしまいます。
不思議さを感じないマジックは、ネタのない芸人を見ているようなもの。
それは言い換えると、娯楽をひとつ失ってしまったということになります。
それでもいい、どうしても知りたいと思う方。
自分はタネを知っても楽しめる!!という方。
あなたはマジシャンとしての素質を持っています。
大抵のプロマジシャンは他のマジシャンのショーを観るのが大好きで、タネを知っていても一般客と同じように存分に楽しむことが出来ます。
なぜでしょうか?
観るスタンスが違うからです。
ルーティン(手順)やコンポジション(構成)、セリフや観客との掛け合いであったり、衣装・舞台照明・音響など世界観のディレクション(演出)であったり…
マジシャンとして重要な要素“ショーマンシップ”を観客側の視点から楽しんでいるのです。
他のマジシャンのショーを観ることで、良い刺激を受けたり新たなインスピレーションを得ることも少なくありません。
それはマジシャンだけに与えられた、ひとつ高い位置からの昇華した楽しみ方と言えます。
どうですか?
観る側から演じる側になるという選択もありますよ。
観て楽しむか演じて楽しむかは…
あなた次第です(笑)