ここでの議論は、動物の愛護と管理に関する法律35条、36条(*1)で持ち込まれた犬猫の動物管理センターや保健所での犬猫の保管期間についての考察である。いかに行政が法律を守ろうとしていないか良くわかる例だと言えるだろう。

 動愛法35条5では、持込された犬猫の措置を定めるように規定されている。その措置である「犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置(告示26号)」の第1 犬及びねこの引取り4では、『所有者が判明していないときは、都道府県知事等は、拾得場所を管轄する市町村の長に対し、当該台帳に記入した事項を通知するとともに、狂犬病予防法(昭和25 年法律第247 号)第6条第8項の規定に準ずる措置を採るよう協力を求めること。ただし、他の法令に別段の定めがある場合を除き、明らかに所有者がいないと認められる場合等にあっては、この限りでない。』と定められている。

 そして狂犬病予防法 第六条 8 をたどって見ると、『市町村長は、前項の規定による通知を受けたときは、その旨を二日間公示しなければならない。 』と定められており、処分できるまでの日数を事実上決めている「狂犬病予防法 第六条 9」は準用されていない。ここがポイントである。

 つまり、明らかに所有者がいないと認められる犬猫や野犬や野良猫そしてそのの子犬や子猫の場合、公示をするように要請しなくとも良いわけで、逆に言えばいつまでも置いておけるということである。

 ちなみに、この措置で準用されていない、狂犬病予防法 第六条 9をたどって見るとこうである。『第七項の通知を受け取つた後又は前項の公示期間満了の後一日以内に所有者がその犬を引き取らないときは、予防員は、政令の定めるところにより、これを『処分』することができる。但し、やむを得ない事由によりこの期間内に引き取ることができない所有者が、その旨及び相当の期間内に引き取るべき旨を申し出たときは、その申し出た期間が経過するまでは、処分することができない。』と書かれているが、犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置(告示26号)では、本条分を準用せよとは書かれていない。(*狂犬病予防法では「処分」と書いてあるだけで「殺処分せよ」とは書いていないので殺処分の根拠はない)

 そもそも、この条文のある狂犬病予防法では、同法により捕獲され、抑留された犬に対しての保管期間を決めている条文であるから、明らかな野犬や野犬の子犬の場合の動愛法による持込・負傷動物で保護された犬猫には「明らかに所有者がいないと認められる場合等」ということで全く適用外ということになる。したがって、この場合や野犬の子犬の場合は、狂犬病予防法での生後90日以内の子犬の適用外を持ち出すまでもなく、動愛法による持込・負傷動物の保管期限は定まらないことになる。

 だから、動愛法35条、36条関連で保健所に持ち込まれた明らかな野犬やその子犬および明らかに所有者のいない犬は、いつまでもおいておくことが出来るために、わざわざ殺処分をする必要が無いと言うことである。そしてそうでない犬猫の場合も、狂犬病予防法(昭和25 年法律第247 号)第6条第8項が準用され、これにより2日間公示されるだけで、狂犬病予防法で捕獲された犬のように、以下の狂犬病予防法 第六条9が適用されないため、処分までの期日は決まらない。

 つまり、狂犬病予防法で捕獲された犬以外の犬猫は動愛法35条5の措置である「犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置(告示26号)」により「処分」する事はできるが(遺失物法(での持ち込み)は除く)、持ち込まれてから処分される日数に法的根拠は無い。だから、物理的に許す限りいつまでも置いておく事は可能である。この事は法律によって決められた手順により殺処分が行われているのではなく、出来るだけ生存の機会を与えることという「犬及びねこの引取り並びに負傷動物等の収容に関する措置」の第3 保管、返還及び譲渡し3 を無視した行政自身の独自の意思決定により殺処分が行われていることを意味する。

 もっと言えば、上記の場合、生存の機会を与えるために努力する気があるならば、殺処分せずに置いておく事は法的に可能なわけである。したがって、この場合は基本的に殺処分する理由が無いことになり、動物の愛護と管理に関する法律第44条違反(*2)となる可能性は高いと言えるだろう。

以上、皆様の保護活動、愛護活動、行政との交渉等のお役に立てれば光栄です。


(注)問題となりそうなのは条例であるが、これは地方自治体により異なっているので一概には言えないが、法令が全国一律の均一的な規制をしているときは条例による規制はできない「工作物除却命令無効確認(最高裁判例 昭和53年12月21日)」に見られる判例からいえるように、動物関連の条例において、動愛法が適用する動物の扱いについて定めるところ以上に、強力な動物の扱いの定めをすることは、同法に違反し、許されない。





*1)
第三十五条  都道府県等(都道府県及び指定都市、地方自治法第二百五十二条の二十二第一項 の中核市(以下「中核市」という。)その他政令で定める市(特別区を含む。以下同じ。)をいう。以下同じ。)は、犬又はねこの引取りをその所有者から求められたときは、これを引き取らなければならない。この場合において、都道府県知事等(都道府県等の長をいう。以下同じ。)は、その犬又はねこを引き取るべき場所を指定することができる。
2  前項の規定は、都道府県等が所有者の判明しない犬又はねこの引取りをその拾得者その他の者から求められた場合に準用する。
3  都道府県知事は、市町村(特別区を含む。)の長(指定都市、中核市及び第一項の政令で定める市の長を除く。)に対し、第一項(前項において準用する場合を含む。第五項及び第六項において同じ。)の規定による犬又はねこの引取りに関し、必要な協力を求めることができる。
4  都道府県知事等は、動物の愛護を目的とする団体その他の者に犬及びねこの引取りを委託することができる。
5  環境大臣は、関係行政機関の長と協議して、第一項の規定により引取りを求められた場合の措置に関し必要な事項を定めることができる。
6  国は、都道府県等に対し、予算の範囲内において、政令で定めるところにより、第一項の引取りに関し、費用の一部を補助することができる。

(負傷動物等の発見者の通報措置)
第三十六条  道路、公園、広場その他の公共の場所において、疾病にかかり、若しくは負傷した犬、ねこ等の動物又は犬、ねこ等の動物の死体を発見した者は、すみやかに、その所有者が判明しているときは所有者に、その所有者が判明しないときは都道府県知事等に通報するように努めなければならない。
2  都道府県等は、前項の規定による通報があつたときは、その動物又はその動物の死体を収容しなければならない。
3  前条第五項の規定は、前項の規定により動物を収容する場合に準用する。

*2)
第四十四条  愛護動物をみだりに殺し、又は傷つけた者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
2  愛護動物に対し、みだりに給餌又は給水をやめることにより衰弱させる等の虐待を行つた者は、五十万円以下の罰金に処する。
3  愛護動物を遺棄した者は、五十万円以下の罰金に処する。
4  前三項において「愛護動物」とは、次の各号に掲げる動物をいう。
一  牛、馬、豚、めん羊、やぎ、犬、ねこ、いえうさぎ、鶏、いえばと及びあひる
二  前号に掲げるものを除くほか、人が占有している動物で哺乳類、鳥類又は爬虫類に属するもの


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