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歴史的建造物を救え!
――古都ウルムの大聖堂修復プロジェクト
ウルム大聖堂の南塔 写真:Business Media 誠 |
【他の建築物や修復現場の画像】
石造りの建物も年数を重ねれば建材が痛み、修復を怠ると石材の落下や建物崩壊の危険が生じる。ノミとハンマーの時代と違い今は小型の削岩機を使 えるから効率は高いが、作業にはどうしても長時間を要する。大聖堂(教区最高位の教会)の規模になると絶え間なく修復箇所が出てくるため、付属の建設作業 所を常設し、1年中修復工事ということになる。
14世紀終りに建設が始まったゴシック様式のウルム大聖堂は有名なケルン大聖堂をしのぐ世界一の高さ(161.53メートル)が自慢だ。今回はこのウルム大聖堂南塔で行われている修復プロジェクトの様子をレポートしたい。
●石材劣化の原因
石造りの建物を傷める第1の要因は自然環境だ。ドナウ川の近くに建つウルム大聖堂は湿気と乾燥に繰り返しさらされ、氷結や急激な温度変化も石材を徐々に劣化させる。
それに加わるのが人為的要因だ。産業革命以降の大気汚染、特に硫黄酸化物が建材を傷め、石材によっては表面が黒く変色している。また戦争被害も致命的だが、第2次世界大戦の爆撃でウルム大聖堂が直撃を免れたのは奇跡的なことである。
ウルム大聖堂建築作業所のロンメル所長によれば10数年前、40メートルの高さから突然こぶし大の石材が落下したそうだ。幸い、落ちたのが建設 作業所の敷地だったため怪我人はなかったが、運悪く人に当たれば間違いなく重症を負ったはず。そういったきっかけもあり、1996年にこの南塔修復プロ ジェクトが始まった。
●作業の様子
地上数十メートルの南塔作業現場までは作業用エレベーターでおよそ5分かかる。修復されていない石材は緑色・黒色・灰色をしているが、修復を終えた石材は本来の真新しい地肌を見せるので違いは簡単に分かる。
修復・複製の主な手法は以下の通り。
1.研磨用の特殊な砂を高圧空気で吹きつけて石材の表面を薄く削り取る。
2.損傷箇所を抜き取り、地上の作業所で修復した後、再び据え付ける。
3.損傷箇所を抜き取り、新たな石材を使って複製し、据え付ける。
作業員は石工マイスターのアンドレアス・ビューム氏を筆頭に職人・見習いを含め14人ほどおり、2~3人のチームで作業に当たっている。見学し た日はたまたま穏やかな晴天であったが、風をさえぎるものが一切無い高所作業は過酷だ。ちなみに日本ならば高所作業では必ずヘルメットを着用するが、ここ では義務にはなっていない。
複製作業は基本的に地上の作業所で行われ、職人の腕を頼りにできるだけオリジナルに近いものが作られる。石工とは別に教会内の木彫品、例えば木 製ベンチの修復作業を担当する職人もいるが必ずしもすべての職人が初めから教会建築を専門としていたわけではなく、異業種間の転職も多い。
●求められるマネジメント能力
ウルム大聖堂の建設当時、最盛期には約2万人が従事していたとされる。総責任者としてすべての作業を統括する「バウマイスター(建築マイス ター)」には土木・建築の知識と技術はもちろん、資材の調達、輸送、作業工程管理、資金管理、人事管理まで巨大プロジェクトの総合マネジメント能力が不可 欠であった。
例えば資材調達だけでも想像を絶する大仕事だったはず。ウルム市周辺には石材が産出しないため大聖堂ではレンガを多用しているが、粘土の掘り出し、レンガ製作所への輸送、薪の調達、製造されたレンガの輸送といった作業も調整しなければならなかった。
ウルム大聖堂の建設が始まったのは1392年で主塔が完成したのは1890年と、実に500年もの時間がかかっている。大規模建築になるとバウ マイスターの交代、戦争、財政難などによる作業中断は決して珍しくない。教会によっては建設期間があまりに長いため途中で建築様式が変わってしまい、1つ の建物でありながらゴシック様式、ルネサンス様式、バロック様式が混ざり合うことさえある。
●ウルム市民の誇りと意地
昔からウルム市民は自治意識が強く、ウルム大聖堂の建設資金はすべて市民の寄付と税金で集められたという。ウルムは12世紀終わりに王の支配を 離れた「独立都市」の地位を獲得し、14~15世紀にはシュバーベン都市同盟の主導的な地位を築いている。旺盛な自治意識が市民による大聖堂建設の原動力 であり、南塔の修復に必要な1000万ユーロも「ウルム大聖堂建設市民協会」が中心となって募金活動を続けている。
巨大な建物と空を突き刺す塔は神の国へ少しでも近づきたいという祈りの発露だが、そこにはまた、教会の権威誇示、時には政治的な背景といった 「世俗の思惑」も強く関わってくる。ウルム大聖堂がケルン大聖堂より4メートル高く作られた理由は「ケルン大聖堂に負けたくない」という市民の意地だった というから、何とも人間臭くて面白い。
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