日本がドイツに勝つとは思っていなかった。

 日本がコスタリカに負けるとは思っていなかった。

 日本がスペインに勝つとは思っていなかった。

 

 私のような俄かサッカーファン、サッカー通、専門家、いずれにとっても、大方の予想は同じだったのではないか。しかしながら結果は、すべて予想に反したものだった。

 

 うちの患者さん、Gさん(発達障害)との、昨日の会話です。

 

<昨日のサッカー(対スペイン)観た?朝早い時間だったけど。>

 

「僕はサッカーは観たくない。なぜなら、20本のシュートを打っても、0点で、反対に、1本のシュートが入って1点とれば、そっちが勝ちになる。こんな理不尽なスポーツは観たくない。どれだけ努力しても、上手くなっても、それが報われないようなのは嫌だ。」

 

<でも、他のスポーツだって、番狂わせがあるじゃない?>

 

「サッカーは酷すぎます。理不尽すぎます。」

 

<スポーツに限らず、我々の人生だって、努力した人が報われなくて、遊んでいた人がいい思いをすることがあるよね?>

 

「そうです。その通りです。でも僕にはそれが許せないんです。それが嫌なんです。」

 

<でも、サッカーだって、工夫しながら努力しているチームは、工夫もせず努力しないチームよりも、勝つ確率は上がるよね。10回やって1回しか勝てないチームに、10回やって3回勝てるよう、チーム力を上げておけば、勝つ確率が上がるよね。今回のワールドカップで、ドイツとスペインに勝てたのは、以前に比べて勝つ確率が上がっていたからじゃないの。サッカーは、そういう番狂わせがあるところが、面白いところじゃないの?日本が必ず負けると分かっていたら、早起きしてみる必要もないよね。>

 

「でも、僕は、そうは思えません。先生のような気持ちにはなれません。」

 

<そう・・・。ところで、あなた、スペイン戦は観たの?>

 

「観ました。でも、あの結果はおかしいです。」

 

<それじゃ、あなた、日本がスペインに負ければいいと思ってたの?>

 

「いえ、日本が勝てばいいと思ってました。」

 

<でしょう。私もそう思って観てたよ。>

 

「でも、あの結果は、おかしいと思います。」

 

<人間は、頭で(意識)考えていることと、無意識下(メタ認知)で考えていることとは、違っていることは、普通にあることだよ。そういうことが自分でも少しわかってくると、あなたも少しは楽になるんだけどね。>

 

「なんですかそれ?僕にはわかりません。」

 

<まあねー。ちょっと難しい話になっちゃったけどねえ>と。

 

 残念ながら、私が伝えたかったことは、Gさんには伝わらなかったようです。でも、無意識下(メタ認知)には、ちょっとは伝わったことを期待しています。

 

(補足)メタ認知とは

 メタ認知とは、私たちが日常生活の中で浮かんでいる認知(思考)を、より高い視点からコントロールしているもう一人の自分の認知(思考)とも言われています。乱暴なたとえをすると、メタ認知が親分で、通常の認知は子分、親分と子分の属する組織の意思決定をするのは親分で、子分は親分の言われるままに行動する。したがって、親分が病むと組織は悪い方に向かい、親分が健康になると組織は良い方に向かう。親分の言いなりの子分を叩いても、その組織を良くすることはできない。組織を良くするには、親分を良くしないとダメ。メタ認知療法では、子分は放っておいて、親分を訓練して組織を良くしようというのです。