先ずは、おじいちゃん先生自身の、ベルソムラ使用状況をお話します。

 

 若い頃から私は、平均睡眠時間は6~7時間程度で、休日に昼過ぎまで寝ていたとか、寝坊して約束に間に合わなかった、というような経験はありません。イベントがある前日は寝つきが悪く、当日も目覚まし時計が鳴る前に目が覚める性質で、大学受験では緊張と興奮でほとんど眠れませんでした。また、旅行などで枕が変わると寝つきが悪く、夜中に何度も目が覚めて、翌日は寝不足状態で過ごすというのが常でした。

 その後、精神科医になって、容易に睡眠薬を手に入れることが出来るようになったおかげで、旅行や出張先のホテルでも、十分な睡眠をとることが出来るようになりました。当時私が使っていた睡眠薬は、レンドルミン(0.25)1錠でした。その効果に不満を感じたことはなかったのですが、平成12年(2000年)にマイスリー錠が発売されてからは、これに切り替えました。マイスリーは、効果発現までの時間が短いこと、抜けが良くて持ち越さないことなどが、自分には都合が良かったのです。真夏の猛暑の中、夜中に目が覚めて寝付けないようなときにも、マイスリーのおかげで、翌日の診療に向けて睡眠を確保することが出来ていました。

 ところが数年前から、<寝つきはそれほど悪くはないけれど、寝ついて2~3時間後に目が覚めて、その後再入眠できない>といった、入眠困難よりも途中覚醒や熟眠障害が問題になる、中年から高齢者に特有の不眠症に移行してきました。寝不足から、<午後の3~4時頃にかけて眠気が襲ってきて、患者さんの前で眠気をこらえるのに苦労する>ということが頻回に起こるようになったのです。かつては、夜中に目が覚めた時に、マイスリー(5)1錠を服用することによって睡眠時間を確保していましたが、最近はベルソムラ(15)1錠を服用することで、この問題を解決しています。ベルソムラを服用することで、夜中に目が覚めても再入眠することが可能になり、<午後の3~4時頃にかけて眠気が襲ってきて、患者さんの前で眠気をこらえるのに苦労する>ということは、ほぼなくなりました。

 初めて、ベルソムラ(20)1錠を服用したときは、<翌日の昼頃まで眠気が残る。夢見が多くて十分に眠った気がしない。これは使えない(自分には合ってない)>と思ったのですが、ベルソムラ(20)0.5錠で服用してみたり、寝床に就く1~2時間前に服用したりなど、いろいろ試した結果、いまでは、寝床に入る1時間前にベルソムラ(15)1錠を服用、というところに落ち着いています。

 現在は、眠気を持ち越すことは全くなく、夢見が多くなるのは自然な睡眠に近いということだし、夢を見ているということは眠っている証拠(日中に眠気がない)なので、それほど不満はありません。少しの不満は、ベルソムラ(15)1錠を服用した後に、パソコン作業をしたり、素振りをしたり、真剣に本を読んだりなどすると、まったく寝付けなくなり、マイスリー(5)1錠のお世話になることです。もっとも、これらの行為は、前回のブログで紹介した通り、オレキシン分泌を自ら促した(覚醒するような行動をした)という、やってはいけないことをやった私が悪いので、反省しています。

 

 さて、もう一人、私と同年代の男性で、マイスリー(5)1~2錠を10年近く服用していた、Hさんの例を紹介します。

 昨年末より、ベルソムラとマイスリーを、しばらく併用して頂いたところ、「ベルソムラを飲んでいると、夜中に2回目(追加)のマイスリー(5)1錠を飲まなくなった」と。それから2か月後には、「マイスリーを飲まなくて、ベルソムラだけに切り替えた。夜中に2~3回、目が覚めるけど、また寝られる。また寝られるという安心感があるから、目が覚めても不安がない。それから、ベルソムラは11時(23:00)に飲むことにして、寝床で本を読まないようにしている」となっています。マイスリー(5)1錠から、1日当たり常時2錠服用に移行しかけていたのですが、さほどの抵抗もなく、ベルソムラ(15)1錠の服用に移行することができました。もっとも、Hさんは、寝床で本を読まないことに加えて、夜の照明をやや暗くしたり、「夜はスマホを見ないようにしている」など、オレキシン分泌の動態に逆らわない(前回ブログ参照)ようにと、地道な努力をしたことが上手くいった最大の要因だと思います。

 

 以上、おじいちゃん先生のベルソムラ使用体験に始まって、Hさんの場合を紹介し、<老人の不眠症には、ベルソムラがとても有用である>ということがわかっていただけたと思います。もっとも、「ベルソムラが老人以外では有用性がない(若い人には効かない)」とか、「老人にはマイスリーは使ってはいけない」ということではありません。

 

 H子さん(86歳)は、もともと寝つきが悪く(夜型)、「宵っ張りの朝寝坊なんです」というお方で、お試しにベルソムラを飲んでもらったところ、「一日中眠くてフラフラして、転びそうになった」といいます。彼女にはベルソムラではなく、マイスリーが適しているといえます。

 ちなみに、H子さんは、2年半前の記事クスリを飲み続けるという判断に登場したH子さんです。以前と変わらずお元気で、“息子さんと飲み会”?をやっていますが、脊柱管狭窄症による腰痛が悪化したので、服用薬は、サインバルタ(20)1錠に変更になり、マイスリー(5)0.5錠を服用しています。頓服薬のソラナックスを使うことは、全くなくなりました。

 

(補足)老人になると、就床および起床時刻の朝型化が起こり、早く眠くなって早く起きてしまう傾向が強くなります。また、睡眠時間は総じて短くなり、深い睡眠が減って、中途覚醒が増えるなど、睡眠の質の低下が起こります。そのため、睡眠薬を必要とする患者さんが、増加します。従来よく使われていた、ベンゾジアゼピン系の睡眠薬では、転倒や記憶障害などの副作用が心配になるのですが、ベルソムラはそのような副作用のがないので、老人にとっては頼りになる睡眠薬なんです

 老人の睡眠障害は、うつ病の発症リスクを高めたり、再発させたりもします。うつ病については、「睡眠時間が6時間台に比べて、5時間未満の短時間睡眠や8時間以上の長時間睡眠で、うつ病の合併が有意に多い」という研究があります(私の臨床実感でも、確かにそうだと思います)。老人に限らず、「睡眠時間は短すぎるも長すぎるのも良くない」ということがいえます。規則正しく、メリハリのきいた睡眠をとるように心がけたいものですね。