閉院してから約1か月がたちました。正月明け早々に、クリニックの後片付けを開始。この3週間は休みなしで、朝から晩まで働き詰め。腰痛が出るわ、指先がボロボロになるわで、マイッてます。

 私のクリニックはもちろん、紙カルテ(電子カルテではなく)なので、2000人を超える患者さんのカルテの量は膨大です。カルテのほかにも、診断書コピー、種々の検査結果、紹介状、その他諸々の関係書類を合わせると、段ボール箱で数十になります。

 個人情報が洩れてはまずいので、自分一人で焚火でもして、これらを焼却できるといいのですが、今のご時世はそうすることが出来ないので、シュレッダーで処理することにしました。しかし、事務用の大型シュレッダーでも、10分間ほど回し続けると、安全装置が作動し、ストップしてしまいます。処理作業は遅々としてはかどらず。未だに、段ボール箱とシュレッダー処理されたゴミ袋の山が、わたしの自宅を占拠しています。

 おじいちゃん先生の、このような嘆きをブログに載せたところで、読者の皆様には何の役にも立たないと思うのですが、シュレッダー処理の過程の中で、一つ発見があったので、そのことについて今日はお話ししたいと思います。

 2000人を超える患者さんのうち、半数以上が1回から2回の受診で終了しているということです。以下は全て私の想像による分析ですが(本人に理由を確かめることが出来ないので)、そういうケースを思いつくまま列挙し、その理由を考えてみました。いくらかでも皆様のお役に立つかもしれません。

 

(1)セカンドオピニオンとして

 通院している病院がすでにあって、そこでの治療が適切なものかどうか訊きたい、というもの。明らかに治療に問題があると思われるケースは少なく、主治医には訊きにくいような質問にお答えする形の、1回きりで終わることがほとんどです。前もって、セカンドオピニオンだと分かっていれば、診療情報提供書を持ってきていただくのですが、持参されない場合がほとんどです。それがなければ、客観性に欠けたセカンドオピニオンになってしまいます。

(2)「自分が精神科の病気に罹っているか知りたい」と

 精神科治療の対象とならないことをお伝えすることで安心され、1回きりの受診になることが多い。会社やネット上のチェックリストで、うつ病と出たから、というケースが多かったような気がします。治療の対象となる場合(日常生活に支障をきたしている)、精神科病名を伝えて、こちらが提供できる治療(薬物治療、精神療法)の説明をします。続けて治療を望めば、2回目の予約を入れてもらいます。

(3)休職するための診断書を希望して

 仕事を続けることが明らかに困難だと診断できるか、産業医の紹介で来院されたのであれば問題ないのですが、明らかに自分の判断(休むための口実)だけのケースは慎重に対応します。でも、お断りするケースは少なかったと思います。

(4)周りの人に(家族、友人、会社の人など)、精神科受診を勧められて

 本人には治療意欲がなく、病気の説明をしても、受け入れることが出来ず、1回きりの受診で終わるケースが多い。もちろん、明らかにすぐに治療を開始した方が良いケースもありますが、本人がそれを望まなければ、機が熟すのを待つしかありません。

(5)本人ではなく、周りのひと(親、妻、夫、友人など)が、患者さんかもしれない本人と、どう付き合ったらいいのかを相談にくる

 <本人を診察しないと分かりませんが>と前置きした上で、本人に起こっているであろうことを、なるべく本人の視点に立って説明をします。

(6)内科やその他の科(耳鼻科、神経内科など)の病気を精神科の病気だと思って

 起立性低血圧、慢性胃炎、不整脈、良性頭位めまい症、顎関節症など、それに相当する科を受診して見るよう、お勧めします。精神科の病気ではないと聞いただけで安心する人も多くいます。

(7)単なる、お悩み相談(失恋、浮気、青年期の悩みなど)

 一応、悩みの成り立ちを(何が起こっているのか)説明をします。精神科治療の対象ではない、自分で解決できる問題である、ということをお伝えして、お引き取り願います。ときには、「俺が治療を望んでいるのに拒否するのか」と怒鳴られたこともありまましたけれど。

(8)不眠を訴えて

 不眠症についての講義をしただけで、自分の思い通りに眠れなくても病気ではない、と受け入れることが出来た人は、1回きりの受診で終わります。もちろん、睡眠導入剤の効果に満足して、通院を継続する方もいます。背後にうつ病や不安障害がある時は、1回では終わらず、治療を継続します。

(9)精神科治療に幻想を抱いて

 自分の悩みが精神科を受診すれば一気に解消する。精神科医は自分の望み通りの対応をしてくれる。というような幻想を抱いて受診。私が提供できるサービス内容を聞かされて、期待していたサービスとは違うと判断し、二度とこないケース。

(10)出された薬で副作用が出たため

 処方する薬については、その効果とともに、可能性のある副作用についても説明しますが(あまりに詳しくやると、怖くて飲めなくなることもある)、副作用が実際に出てしまうと、「自分に合わない薬が出された。精神科のクスリはやっぱり怖い」と判断し、再度受診することが出来なくなるようです。

(11)入院してしまった

 精神症状が活発で、薬を処方するも、それでは間に合わず、入院になってしまった(予約キャンセルの電話をもらって分かった)。

(12)軽い不安障害(一過性の不安)

 不安時だけの頓用薬を出したところ、非常に良く効いて、治ってしまった。いざという時にはこの薬を飲めばよいという、お守りができたことが大きいのではないか?不安になる不安から、一時的に遠ざかることで治ってしまったのではないか、と思われます。

(13)医者との相性が悪い?

 どういう理由か定かではないが、診察室に入ってきても、ずっと無言なため、<どんなことでお困りですか?私にどんなことを期待しますか?>などと訊いているうちに、「先生、怖い」といわれて、<私とは相性が悪いようなので、自分に合うと思う先生を探した方が良いようですね>と言って、お引き取り頂いたケースがありました。

(14)特殊なケース

 「今通っている病院の主治医に不満はありません。友人に、ここの先生のことを聞いていて、一度会ってみたいと前から思っていたので、今日は母に連れて来てもらいました」と。セカンドオピニオンとしての説明をしたところ、同伴されたお母さまに、「こんなに笑わせてもらった精神科は初めてです。来てよかったです。ありがとうございました」と。20年前のエピソードですが、記憶には残っていませんでした。

 

 他にも、1~2回で終了になったケース、そうなった理由は多々ありそうですが、これをチェックし続けると、シュレッダー処理がますます遅れ、占拠状態から脱出できないので、これで終わりにします。そして、雑紙回収の指定日(私の住んでいる市は、月に一度の水曜日)を指折り数えて待っています。