私のクリニックの患者さんの、約10%は、80歳以上です。そのほとんどは、何らかの持病(糖尿病、高血圧など)があり、どこかの内科に通院していて、そこの先生が、家庭医の役割を果たしてくれています。そういう場合には、新たに精神科クリニックを紹介しないで、その先生に、当クリニックの処方を継続して出してもらうことをお願いしています。もちろん、精神症状が何年にもわたって安定していて、飲んでる薬の量が少ないことが前提です。
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診療情報提供書 令和4年10月○○日
△△△内科医院 ○○先生 御机下
以下のとおりご照会・ご報告いたします。よろしく御高診のほどお願い致します。
○下○子(女)昭和8年2月生まれ(89歳)
診断名:老人性うつ病
当クリニックは近く閉院いたします。つきましては、○下さんの、今後のフォロー(下記処方薬の継続投与)をお願い申し上げたく、これまでの経過を報告させて頂きます。
中学校教員(家庭科)を退職後、平成8年頃(64歳時)、うつ病を発症。抗うつ薬を3~4年服用して完全寛解に至り、夫婦で海外旅行にも出かけていた。
平成24年2月頃より、特に思い当たるきっかけもなく、食思不振、体重減少、意欲低下が出現。あらゆる胃の検査をやっても異常なく、内科医の勧めで、平成3年3月(79歳)、当クリニック初診。初診時、「食欲がなくて3㎏体重が減った、口の中がずっと荒れていて、テレビもうるさいし、物事にも集中できず、うつろな感じ。ご飯の支度が全くできなくなった。毎晩、夜中の3:00に目が覚めて、そのあと全く眠れない」と訴えていた。内科から出ていた薬は、ジェイゾロフト、ドグマチール、デパスだったが、効果が無かった。
平成24年6月より、リフレックス(15)2錠、マイスリー(5)2錠、ワイパックス(0.5)1錠、まで増量したところで軽快し始め、平成25年3月で完全寛解に至った。平成25年11月よりリフレックスをゆっくり減量、令和2年4月には、リフレックス(15)0.5錠のみとなった。
現在、脊柱管狭窄症、耳鳴り、逆流性食道炎などの持病を抱えながらも、89歳にしてピンと元気です。M子さんには、<リフレックス(15)0.5錠は、うつ病の再発予防と睡眠薬(途中で目が覚めないため)としての役目を担っています。今度、うつ病を再発したら、QOL(生活の質)がガタ落ちになって、認知症のようになってしまう怖れもあります。今後の生活を元気で過ごすには、死ぬまで飲み続けてもいいと思います>と、お伝えしています。脊柱管狭窄症で歩行が不自由(通院に苦労している)なことを考慮して、貴院から処方されている内科薬に加えて、下記処方を一緒に処方して頂ければ幸いです。よろしく御高診のほどお願い申し上げます。
(現処方)
リフレックス(15)0.5錠
眠前×30日分
○○メンタルクリニック 医師 ○○ □
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M子さんは、娘さんと2人暮らし。脊柱管狭窄症があるので、歩くスピードはゆっくりですが、89歳にして、背骨がピンと立っていて、姿勢も良い。心は若々しく、羽生結弦の大ファン。昨年の東京オリンピックでは、「先生、羽生選手みました?私は4回転半が飛べるか、ハラハラドキドキで、見てられなくて、胃が痛くなりましたよ」と。
老人のうつ病は、あちこちの身体症状を訴えて、うつ病と診断されるのが遅くなるケースも多い。M子さんも、内科や耳鼻科などをいくつか受診して、やっと当クリニックにたどり着きました。しかも、今回のうつ病は再発でした(うつ病は再発しやすい病気です)。今現在、治っているからと言って、薬を中止して、今度再発して寝込んでしまったら、現在のような元気な姿は2度と見られなくなるかもしれません。年をとればとるほど、回復力(自然治癒力)が衰え、同じ量の抗うつ薬を投与しても、同じように寛解に至るとは限りません。80歳を超えて元気に暮らしている方は。少量の抗うつ薬を止めることに、チャレンジすることはないと、おじいちゃん先生は考えています。10年以上前の抗うつ薬と比べて、現在の抗うつ薬は、副作用が格段に少なくなっているので、服用を続けることのメリットが大きいんです。以下の過去ログも参照ください(後半部分)。
