2021年(令和3年)、東京オリンピックがいよいよ始まりました。これからの2週間余り、普段はあまり見ることのない競技も含めて、おじいちゃん先生のスポーツ観戦漬の日々が続きます。うちの患者さんに、<オリンピックが始まるね。テレビで見る?>と尋ねると、「観ません」と返ってくることが多く、ちょっと拍子抜けしてしまいます。

 前回の1964年(昭和39年)の東京オリンピック当時、まだ小学生だった私は、各競技のメダリスト(金、銀、銅)の名前、国名、記録を、一冊のノートに書き留めていました。まだ純粋だったので、<そんなもの、新聞を見れば書いてあるよ、全競技の結果がわかる特集号が後から出るから、・・・>なんてことは思いもしなかった。当時は、自宅にテレビのない家庭も少なからずあったので、授業中にクラス全員で観戦するという時間もありました。スポーツ好きでおしゃべり(当時は)だった私は、競技の内容を解説したり、勝利予想をしたりするので、周りの同級生から煙たがられていたかもしれません。何を隠そう、<将来は、スポーツライターになりたい>と思っていたこともあったんです。

 

 さて、今回の東京オリンピックの開催にあたって、巷では賛否両論が飛び交いました。“おじいちゃん先生”に言わせれば、<そんなの、どっちでもいいじゃないか。開催すると決まったからには、コロナ禍の中、大会運営に大変苦労されている関係者に感謝して、大いに楽しませてもらいましょう>です。賛否両論に対して、新聞やYouTubeで関連記事をいろいろ見たり、自分でもいろいろ考えてもみましたが、どっちが正しいとも、どっちが間違っているとも、結論は出ませんでした。<開催されるにしろ、開催されないにしろ、それぞれにメリットとデメリットがあるわけで、そのメリットもデメリットも予想どおりになるかどうか分からない。どちらかの意見に固執することの方が問題なのではないか>というのが、私の結論でした。

 

 診察の中で、進路選択などの人生の岐路に立っている、患者さんから、「先生、どっちを選択するべきなんでしょうか?」と質問されることが多々あります。そういう時の私の決まり文句は、<私には、わからないわ。どっちでもいいと思うよ(阿弥陀くじで決めたっていい)。あなたが選択にそれだけ悩むということは、どっちを選択しても、それが正解だと思うよ。私が今、どちらかを指示して、あなたがそれを選択したとしたら、上手くいかなかった場合、後悔するよ。上手くいくかどうか、現時点では誰にもわからないことだから、自分で決めれば、どっちを選んだって、それが正解だよ>です。患者さんが、それを聞いてどう思うのかは分かりませんが、精神科医の分際では、その程度のことしか言えないんです。

 

 コロナ禍で、遠出するのもはばかれる状況の中、自宅で超一流のスポーツ選手の技が見られる機会をもらえたというのは、とてもありがたい話です(スポーツに興味のない方には申し訳ない限りですが)。さらに、経済力が豊かで平和な日本に生まれたおかげで、生涯において、夏のオリンピック、冬のオリンピック、合わせて4回もの自国開催オリンピックを経験できた“おじいちゃん先生”は、とても幸せだったと思います。今回の東京オリンピックも、冥土の土産として、深く心に刻んでおきたいと思っています。