6年前の“初診の方へのアンケート”に、Y子さんは直筆で、「娘の病状について、セカンドオピニオンを伺いたい。親として状態を把握しておきたい」、と書いています。当時、それを見て、<あれ、ずいぶん、上から目線の表現だな。これがY子さんの、娘さんに対するスタンスなんだろうな>と、想像することができました。その後、定期的に通院し、面接を繰り返すうちに、その中身がだんだん明らかになっていきました。
娘さんが、病状が悪化すると、決まっていうセリフが、
『お母さんは、私の言うことをちゃんと聞いてくれない。私はお母さんの言うとおりにはできない。小さい頃、一番つらかったときも聞いてくれなかった。お母さんはなんでも、私の言うことを否定する』、というものです。確かに、Y子さんは、面接しているとき、私の話をさえぎって、自分が理解したことを先回りしていう癖がありました。
そこで、私が提案したのは、
<娘さんの話を聴く際、何かを答えようとか、アドバイスしようとかする必要はない。単なるオウム返しでいいんです。ああ、そうだったの、うなずくだけでもいいんです>と。
<娘さんとの会話の途中で(遮って)、自分の意見を言うのは止めた方が良い。あなたが言ってることが正しくても、相手は、否定されたと感じるもの。あなたの会話の癖みたいなものです。話だけ聞いて、放っておけるとよい。話の決着をつける必要はありません。しばらくたってみると、あなたが言いたかったことを、娘さん自身が、自分の意見として言い出すことだってありますから>と。
<一つ提案があります、娘さんと、10分間会話するとしたら、あなたの持ち時間は1分間として、娘さんには、9分間の持ち時間をあげてください。娘さんの問いかけに、全て答えようとすると、あなたの話の方が長くなるので、そこは注意が必要です。娘さんの話が理不尽だと思っても、黙って聞いてあげてください。その場で理解してもらおうと思っても、それは無理というものです。分かってもらえるのは、10年後かもしれませんけど(笑い)>というものでした。
このような提案が、娘さんとの関係改善に、どの程度有効であったか、定かではありません。しかし、『動揺しない、焦らない、もがかない』ために、少しは役立ってくれたのではないか、と思われるY子さんの言葉をいくつか拾ってみると、
○「何とか過ごせました。2度ほど娘が爆発したけど、何となく対処の仕方が分かった。とりあえず、主治医に出してもらってる、リス液(興奮を鎮める薬)のませて、落ち着かせてから、何があったの、と話を聴いた。心理的に蓄積して爆発しているのだから、普段思っても口に出ないことを言ってるのだから、とにかく話を聴く。・・・『私が家にいると、怠けてると思われてる。何かをしていないと非難されている。・・・というのが強迫観念のように出てくる・・・』、と娘は言います。でも、そんなこと思ってないんですけどね」と。
○「私は、無理をして付き合ってた。最近は、言ってもしょうがない、とサラッと流せることがあります。いつもできるわけではないですけど。これまでは、自分の方から近づきすぎていたかもしれません」と。
○「まあ、ぼちぼち、やってます。娘には、あんまりかかわらない方が、いいみたい。私がいない方がいいというのもあるみたいなので、編み物に2回行った。行けば、元気になって返ってくるので、娘に、元気だね、と言われた」と。
○「子供の育て方セミナーに行ってみました。そこでは、安心感を与えないといけない、と言ってて、・・・一昨日、朝起きてこなくても、放っておいて、私は、ウオーキングに出かけました」と。
○「娘が、週に2~3回、大声で喚く。話が終わらなくて。でも、最近は、今まで話さなかったことを、いろいろ話すようになった。そんな話を、これまではしない子だったけれど」と。
○「私は娘に対して何かをしようとしていたんだ、と納得がいきました。娘のことをやり過ぎていたのか、自分で自分にプレッシャーをかけてたのかもしれない。自分が家族をコントロールしなくちゃいけない、なんて思っていたのかもしれない。娘のことも、母のことも、ほどほどでいいんだな、と思えるようにもなってきた。・・・」と。
これらを、注意深く読むと、娘さんとのかかわり方が随分変わったな、と思うんです。また、勉強熱心で、内省力もある方なので、この6年間、“気づき”がいろいろありました(手動瞑想もやってもらっていますし)。こういう変化が、『動揺しない、焦らない、もがかない』ための、下地になっているに違いありません。とりわけ、「私は娘に・・・」という話を聞いたときは、おじいちゃん先生、おおいに喜びました。
(補足)過去6年間、娘さん病状はめまぐるしく変化し、処方されている薬の内容や容量も変わっています。Y子さんには、娘さんの処方内容が変わった時には、変更の意味や、主治医が何を考えているのかを説明してきました。このよう説明は、病状と薬の関係の理解が深まることにつながり、『動揺しない、焦らない、もがかない』ためには、おおいに役立ってるはずです。
さて、Y子さんには、娘さんのこと以外に、もう一つ、大きな悩みがありました。面接の始まりは、いつも、「娘のことで・・・」「娘が、落ち着いていて・・・」「娘が、大変で・・・」と切り出すのですが、面接の後半では、「もう一つ、お伺いしたいことあって、じつは、母のことで・・・」というものでした。
これについては、次回のブログでお話ししたいと思います。
