うちの患者さんからよく受ける質問の一つに、会社や学校、隣近所などで、「私があいさつしても、あいさつを返してこない人がいるんですが、どうしたらいいでしょうか。私のこと、嫌ってるからでしょうか。私からあいさつしない方がいいのでしょうか?」といったものがあります。

 このような質問をしてくる患者さんには、相手の気持ちを考えすぎてしまうのが特徴である、対人恐怖(社交不安障害)の方が多いのですが、対人恐怖ではない一般の方々でも、悩まれる方がけっこう多いと思います。

 

K子さん(45歳) 診断名:社交不安障害、神経症性うつ

 K子さんは、派遣社員として、かつては幾つもの会社を転々としていました。仕事に就いても短期間で自分から辞めてしまう大きな要因の一つが、“挨拶と雑談”だったんです。仕事の内容や忙しさではなく、休憩時間や仕事が途切れて暇になったときの、同僚や上司との挨拶と雑談のやり方に悩んでのことでした。

 

◎挨拶の心得

<あいさつは先手必勝です。相手の反応(挨拶するしない、表情、態度など)に関係なく、あなたの方から先に挨拶するのがいいんです。相手が挨拶を返してこないのは、何か考え事をして気づかない場合もあるだろうし、体調が悪い場合もあるだろうし、ど近眼であなたが見えていない場合もあるだろうし、昨晩の夫婦げんかで機嫌が悪いのかもしれない。たとえあなたを嫌っているとしても、それは相手の問題であって、あなたの問題ではありません。相手のことが好きでも嫌いでも、同じように挨拶すると決めておくんです。挨拶されて不快を感じる人は、ほとんどいません。「自分が挨拶を続けていたら、相手も挨拶するようになった」というのはよくある話です。先手必勝で挨拶してしまえば、「私はやるべきことはやりました、あとは野となれ山となれ、そちらが挨拶するしないはご自由に」となって自分の緊張が和らぐんです>というのが、私のアドバイスです。

 

◎雑談対策

 雑談対策としては、過去ログの“社交不安障害(3)-アドバイス-”、を参考にしてください。雑談を上手にこなすのは、挨拶の心得ほど簡単ではありませんが、自分のスタイルを根気よく貫き通せば、必ず成果が得られます。アドバイスに加えて、手動瞑想の習慣化が加われば、さらなる成果が期待できます。

 

 現在のK子さんは、“挨拶や雑談”では、自分のスタイルを貫くことが出来て、そのことに悩むことは少なくなり、自分から退職することはなくなりました。残念ながら、手動瞑想を習慣化することは、いまだ出来ていません。

 

 ところで、「自分が挨拶したのに、相手は挨拶を返ししてこなかった」という状況で、社交不安障害ではない多くの人たちは、「なんだ、その失礼な態度は!」と、怒りを感じてしまいます。しかし、それは間違いです。仏教的見方では、怒るということは、自分を破壊していることになります。「私が挨拶したのだから、挨拶をかえすべきだ」という期待があって、それが思い通りにならなかったために自分は怒っているのだ、ということに気づくべきなのです。おじいちゃん先生も、早くそういう境地に至りたいと思って、手動瞑想を続けているんです。