これから何回かに分けて、“おじいちゃん流”うつ病治療と称して、私がこれまで行ってきた治療についてお話します。これらは、あくまでも、私が自己流で行っているものであり、一般標準的な(いろいろな意味が含まれていますが)ものではありません。また、過去ログ“うつ病を考える(1)~(9)”などと重複するところが多いかと思いますが、ご容赦のほどを。

 

 以前のブログでも書きましたが、一般の人がよく口にする、「わたし、うつみたい」とか、「ときどき、不安で不安でたまらなくなるの」といったものは、日常生活の中で普通にみられる心の浮き沈みとして、治療の対象とならないものが多い。「わたし、うつ病だと思います」「私は、不安症だと思います」といって来院されても、治療の対象にはならず、<あなたは、精神科治療の必要はありません。あなたの悩みは、正常の範囲内のものです>と伝えると、安心して帰られる方も多い。

 

 ここで余談を一つ、以前(私も若かった頃?)、<あなたの悩みは正常範囲のものなので、もうここに来る必要はありません・・・>と伝えたところ、その若い男性は(だったと思う?)、「私がこんなに苦しんでいるのに、治療の必要がないというんですか。・・・」といって、急に怒り出しました。「あなたはヤブ医者だ!」とまではいわれなかったけれど、私も腹が立ってきて、<ここはお悩み相談所ではありません>、と言いたかったのですが、ぐっとこらえて我慢しました。その後どんなやり取りをしたかは、残念ながら記憶にありません。

 

 それでは、治療の対象となる(精神科的治療を必要とする)、“病的うつ”、“病的不安”とは、一体どんなものでしょうか。

 

 “病的うつ”とは、喜怒哀楽の感情がなくなるなど、全般的な活力が低下し(エネルギーレベルの低下)、抑うつ気分が持続するもので、睡眠障害(不眠・過眠)や身体症状が必発。

 “病的不安”とは、手の震え、動悸発汗、呼吸促進など、自律神経の過活動が持続的に認められるようなものをいいます。不安というと、精神的な悩みのようなものだと考えている人が多いのですが、実際は、精神症状が体の症状(自律神経症状)となって表れているとも言えます(内科では、自律神経失調症と診断されていることも多い)。

 このような、“病的うつ”や“病的不安”に見舞われると、本人の苦しみに加えて、これまでできていた日常生活において大きな支障(家事ができなくなる、学校や仕事に行けなくなるなど)が出るために、精神科の治療が必要になるのです。

 

 さて、実際に患者さんを診察してみると、うつ病(感情障害)の患者さんの大部分には、“病的不安”を伴い、また不安障害の患者さんであっても“病的うつ”を伴うものがほとんどです。<あなたは、うつ病です>、<あなたは、不安障害です>などと、そう簡単には診断することはできません。したがって、初診の段階では、うつと不安の合併として“不安抑うつ状態”(過去ログ参照)と診断するのが、最近のほとんどの精神科医の傾向であり、私もそうしています。

 初診の段階では、<今日は、いろいろとお話を聴かせていただきましたが、今の段階では、うつ病みたいなところと、不安障害(かつては神経症と言っていた)みたいなところの、両方が見られます。今後、どちらかはっきりわかったらお伝えしますが、これから治療を進めていくうえでは、両方の治療を同時に行っていくので、心配はいりません・・・>といった説明をしています。転院してきた患者さんに、<前のクリニックでは、何という病名がついていましたか>とは、必ず訊くことにしていますが、「うつ、といわれていました」「病名は聞いたことありません」といったものが多く、実際に聞いていないのか、聞いても忘れてしまったのか、病名を言いたくないのか(稀にある)、いろいろなケースあるのではないかと思います。

 

過去ログ:“「うつ」と「不安」の区別は難しい”、“世間でいう「うつ病」とは”なども読んでいただけると、きょうの話の内容を、もっと具体的に理解していただけると思います。