昨年、4月25日にアップした、「先生と喧嘩しそうになったけど」のY子さんに再登場していただきます。現在は、予想外の展開になっているんです。
平成 30年4月の時点では、リフレックス (15) 1錠、メイラックス (1) 0.5錠、ハルシオン(0.25) 1錠、を服用していた。その後何度か、ハルシオンの減量や、<ほかの眠剤(ルネスタなど)に変えてみましょうよ>などと提案してはみましたが(喧嘩することなく?)、「あれは弱くてダメですね」などと、あっさりと拒否され続けました。
平成 30年7月「自立型のケアハウスに入ろうと思っているんです。そこは要介護になってもいられるんです。息子夫婦には迷惑かけたくないんで、2~3年前から申し込んでおいたんです。・・・ハルシオンのことは、向こうに落ち着いてからにして下さい。あれ(手動瞑想)やってますよ・・・」と明るく語っていた。
その後 3か月間、通院中断。抗うつ薬の服用もストップしていた。
平成 30年11月「ここまで来るのが面倒だったので、3か月前から内科の○○先生に、寝る前にデパス (0.5)1錠もらってたんだけど、止めてみたら4~5日前から、急にザワザワしてきて、軽いけど前と同じになってきた。やっぱり(おじいちゃん)先生の言うとおりになったわ、と思い出したので今日きました」と。Y子さんは、9月にケアハウスに入所。週2回は外部の健康マージャンには続けて通い、「毎日6000歩くらい歩くと夜は寝られるし、ケアハウスのご飯はまずいので、外でウナギ食べたりしています」という。
この時点では、抗うつ薬の中止によるうつ状態の再発もなく、ハルシオンの代わりにデパスを服用することで睡眠も確保されていた。しかし、4~5日前からデパスを中止すると、離脱症状が出現した。<今の症状がデパスの離脱症状か、うつの再発の兆候かはっきりしないので、次回までは、メイラックス (1) 0.5~1錠として、様子をみましょう。でも、15年近く飲んでいたハルシオンを止められたのは大きな成果ですね>と伝えた。
平成 30年12月「薬は半分(メイラックス (1) 0.5錠)でも大丈夫。ザワザワもまったくない。ケアハウスに入って3か月たったので環境にも慣れたのかな。血圧も落ち着いてきた。ケアハウスは半分以上が認知症で、私がお世話している」と、明るく元気。
平成 31年2月「正月は実家に外泊してました。デパスほしいというのも全くありません。孫の世話も喜んでやってる」と。<それでは、メイラックス (1) 0.5錠を、毎日から一日おきにまで減らして飲んでみてください>と指示。
平成 31年3月「薬なくても大丈夫みたい。メイラックスは1週間飲んでない。膀胱炎が大変で、そっちの方に気が行ってた。でも人を傷つけたかなと思ったときには悩んでしまう」と。<それでは、メイラックス(1) 0.5錠は、頓用ということにしましょう>と指示。
平成 31年4月「変わりはないようです。メイラックス(1) 0.5錠は6回飲みました。考え事して眠れないとき、何となく寂しいとき、昼に飲んだ時もあります」と相変わらず元気さを見せてくれる。<今は抗うつ薬も飲んでないんだし、今こそ、例のコレ(手動瞑想の動作)やって、うつの再発予防をやりましょうよ>と伝えると。「そんな面倒くさいことやれないわ。(マイッタ!)でも呼吸の方は(呼吸コントロール法)身についてるんで、自然にやってますよ。再発したら、なったらなったで、またここに来りゃいいや、と思っているので気が楽です」と。<それにしても、睡眠薬も抗うつ薬も今はやめられて、再発もせず、調子がいいのは、ひょっとすると、ケアハウスに入所したことで、決まった時間に寝て起きて、決まった時間に食事して、週2回は健康マージャンに出かけ、・・・そういうのがいいんじゃないの>と訊くと。「私もそう思う。息子夫婦との仲がこじれないうちに家を出て、孫とも仲良くなれたし、あれこれ悩まないで気楽だし・・・ケアハウスの食事は本当に不味いけれど、たまにはウナギ食べに行ったりしてます。アハハ・・・」と。
平成 30年7月の時点では、Y子さんが、このような展開を見せてくれるとは、全く予想できませんでした。うちのクリニックに通院している高齢者のうつの患者さんの治療の経験からは、1~2年の間に、リフレックス(15) 0.5錠、メイラックス(1) 0.5錠・頓用、に持っていければ、というのが目標でした(Y子さんは、抵抗するだろうなとも予想していた)。ところが、ケアハウスに入所したのをきっかけとして、睡眠薬も抗うつ薬も中止して、今は、メイラックス (1) 0.5錠・頓用だけでやれているのですから驚きです。ケアハウスに入所によって得られた、規則正しい生活スタイル、心理的ストレスが少ない環境(今のところ?)のおかげで、睡眠薬も抗うつ薬も必要とせず、うつの再発も予防されているようです。規則正しい生活習慣は体に優しく(脳にも優しく)、無駄にエネルギーを消耗することがないので、うつの改善と予防になるんです。
もっとも、過重労働や複雑な対人関係に身を置かざるを得ない生活を強いられていて、薬を減らしたくても減らせないでいる患者さんは大勢います。しかし、できる範囲で、日々の生活習慣を見直し、脳に優しい(交感神経が優位になりすぎない)生活スタイルを工夫してみるといいのではないでしょうか。