手動瞑想を習慣化し、継続することができる人は少ない。Kさんは、その少ない中の一人で、約2年間つづけた成果を今見せてくれています。

 

Kさん、33歳、通院歴:3年10か月、診断名:対人恐怖症、神経症性うつ病

 故郷の○○県在住の頃(当時22歳)、「職場の人間関係から、仕事に行くのが辛くなり、欠勤が重なって・・・」のため、職場近くの精神科を受診。社交不安障害と診断され、ドグマチール、ワイパックスが処方されて出勤が可能になった(通院期間は約1年)。

 平成24年(26歳)「アルバイト先での人間関係がよくなかったとき、朝起きれない、食べられない、緊張して上手く話せない・・・」などを主訴として、精神科クリニック受診。“うつ病”との診断で、サインバルタ(20)2錠が投与されて症状は軽快。通院と服薬は継続していた。

 平成27年1月(29歳)、3年間務めたアルバイト先の書店で、アルバイトから契約社員に昇格したことで、上司の要求や責任を負わされることが多くなった。それをきっかけに、ケアレスミスが多くなり、欠勤も目立つようになった。「もともと、先生が話しづらく、自分が病気なのかもわからなくて、待ち時間がものすごく長いし、病院をかわりたいと思ってたので薬局に相談したら、このクリニックを勧めてくれた。」という。

 平成27年3月、当クリニック初診。いわゆる“不安抑うつ状態”。前医では、対人恐怖に関する説明がなく、22歳の頃に通った精神科で、“社交不安障害”といわれたことはすっかり忘れていて、「今の自分の状態とは、まったく関係ないと思っていた」という。

 その後の治療は、投薬内容を含めて、いろいろ工夫してみたものの、順調には進まず。欠勤も増え、休職してみたものの、ますます不安が強くなり、平成28年2月には書店を自分から辞めた(回避反応であることは明らかだった)。すぐに、アルバイト探しを始めたものの、「雰囲気の良くない職場だった。店長があいさつしない。」「教えてくれる人が横暴で威圧的で、思い出すだけでブルブル震えた」といった恐怖反応のため、どのアルバイトも続けられず。平成28年5月、アパートを引き払い、実家の両親と同居。3か月間職業訓練校に通った後、いくつかのアルバイトにチャレンジしたが、どれも恐怖反応のため続かなかった。

 

     (平成29年3月、手動瞑想認知療法を導入)

 

 平成29年9月、父親との折り合いが悪くなり、実家を出て単居生活。平成29年10月から、郵便局で週5日のアルバイトを始めたが、(寝る前に:手動瞑想15分、朝夕通勤時:歩行瞑想20分、思いついたときに適時)を現在に至るまで毎日続けることができている。

 平成31年2月現在、朝:サインバルタ(30)1錠、眠前:メイラックス(1)1錠、ドグマチール(50)1錠を服用している(減薬中)。このケースでは、薬の効果よりも手動瞑想を使った認知行動療法(手動瞑想認知療法)が効いているという感触を持っています。ここ1年間のKさんとの対話をいくつかピックアップしてみました。

 

 平成29年11月、「少し瞑想が分ってきた。自分が人に緊張しているのに気づくようになった」と。<自分が緊張しているということを、後から気づくのではなく、その場で気づけるようになったのかな>と。

 平成30年2月、「仕事中に肩がぶつかった人がいて『ごめんなさい』とは言ってたけど、舌打ちされて、ひどく落ち込んだ。でも次の日は大丈夫だった。」

 平成30年6月、「一瞬だけど、周りのことも聞こえるし、手にも集中しているというのがある。」「プライベートで告白して、ダメで、37度台の熱が出たけど、次の日は立ち直ってた。2年前と違うのは、自分が彼女に対して依存する傾向がある、と客観的にみていた。」

 平成30年8月21日「仕事を2日連続で休んだ。朝起きると不安が出てきて起き上がれない。いろいろストレスはあるけど、明確なものがないのに、先週もボロボロ休んだ。仕事は好きなので続けたい。・・・これまでのことを考えると、長く休まない方がいいのかな明確なものがないのに、休んでもどうかと思う」と。<仕事に行けなくなったというのは、これまでと同じパターンですね。しかし、これまでと違うのは、今のあなたは、自分の状況も周りの状況も見えていて、感情的に(ウツっぽく)なっていない。・・・・明日、朝起きたらすぐにソラナックスを飲んで突入しましょう。恐怖突入によって成功体験を上書きしていきましょう!>、とはっぱをかけた。Kさんは、突入することはすでに自分で決めていて、その確認のために(保証を得たくて)来院したのかもしれない。

 平成30年8月24日(3日後)、「順調に仕事に行けた。二日間はソラナックス飲んでいったけど、今日は飲まなくても行けた。職場の人とも話をして、それで楽になった。22日の朝は、不安がなかった。何かあっても前ほど気にならず、切り替えられるようになった。手動瞑想やってると切り替えられる。集中すると鳥肌が立つというのが僕の場合。良いものを教えてもらって、本当に良かったと思う」と笑った。<8月21日の面接の段階で、8月22日の成功が決まっていたような気がする。自分の思考や行動を客観視できていて、内省力がアップしている。コレの(手動瞑想の)効果かもしれないね>と私も大笑いした。

 平成30年10月「彼女と別れました。もう疲れちゃって、こっちから復縁は求めない。・・・職場でも彼女と同じようなメンヘラがいると気づいた。急に相談事(打ち明け話)を持ちかけられて、その日は時間がなかったので、詳しくは明日訊く、と言ったら次の日から態度が変わって、自分だけを無視するようになって、何か僕悪いこと言った?、と訊いたら・・・でも、そういう人は相手にしないように・・・そういうことに怒ったりするけど、引きずらなくなった」と。<相手は自分の言ったことが、後から気まずかったのかもしれない。あなたに腹を立てたとは限らないよね>と。「自分の感覚に気づく、こんなこと、今考えていたのかなとか(その場で)、細かいことも分かるようになった。総合的には、楽しい毎日が送れている」と言って笑った。

 平成30年11月、「朝起きたら落ちこんでいて、仕事に行き辛い日が2日ほどあった。疲れたのかなと思ったけど、先生が言う成功体験の話を思い出して出勤した。・・・自分の(職場)環境を守るため、例のメンヘラちゃんの上司に、うちの階によこさないでくれ、と言いに行った。いやな人の誘いを断るとか、自分にストレスがかかりそうなことを上手く避けるようになった。そしたら、メンヘラのような人が自分の周りからいなくなった。自分は弱くなったのかな?」と。<嫌なことをイヤといえるようになったのは良いことだよ。今までは、イヤといったときの相手の反応が怖くて、それを(イヤと言うのを)回避していたけど、今回はそれに対する恐怖突入に成功したということが起こったんだと思う・・・>と伝えた。

 平成31年1月、「自分は何かにつけ神経質すぎるんじゃないかと思う。わたしの仕事場に、聞こえよがしに他の人の仕事のやり方を非難する人がいて、まずいと思って、そのことを上司に報告した。けれど、そこまでしなくてもいいのかなとも思う。・・・自分は、騒がしいところでは、本を読まないようにしていたけど、外が騒がしいと本が読めないのはおかしいと思って、騒がしいところで読んでみたら、集中すれば読めるんだ、とわかった。・・・周りの人のことを気にしすぎるんじゃないか。いやな人、変な人のことを、前は怖がってビクビクしていたけど、今はそれを怒る(怒れる)ようになっている。直接その人に怒りはしないけど、報告もしなくてもいいのかなとも思う。こんなんでいいんかなあ、どうなんでしょうか先生?」と。<いい感じになってきたね。その場の自分の気持ちがよく見えてるよね。そして自分でチャレンジしてみたり、自分を変えようとしているぢゃない。怖いという感情が、怒りに変わって、その怒りの感情に気づき、その怒りの持っていき方を自分で工夫してるぢゃない。それは、コレ(手動瞑想の動作)成果かもしれないよ。これからも続けてくださいね>と、二人で大笑い。

 

 紆余曲折(辞めそうになったり)はあったものの、郵便局でのアルバイトは1年4か月続いていて、適応レベルも上がっている。Kさんの場合、手動瞑想を始めて1年以上は効果の感触が得られなかったものの、最近になって急に彼の言動に変化が表れています。不器用ながらも、素直で根気強い彼の性格が手動瞑想を継続させ、今になって花を咲かせているのかもしれません。“継続は力なり” と肝に銘じたいものです。(過去ログ、『手動瞑想の成果とはも参照ください。)

 

 

注:“メンヘラ”という言葉を、おじいちゃん先生は知りませんでした。ネットで調べてみると、「“メンヘラ”とは、メンタルヘルスが語源となっており、精神的に不安定な状態の人や、心に病を抱えた人のことをさす。中には自傷行為に走ってしまったり、鬱病になってしまう人もいる」となっていました。