テニスの全豪オープン(オーストラリア/メルボルン、ハード、グランドスラム)は26日、女子シングルス決勝が行われ、大坂なおみがP・クヴィトバ(チェコ)を7-6 (7-2), 5-7, 6-4のフルセットで破り、日本勢男女を通じて初優勝を果たした。昨年の全米オープンに次ぐ、グランドスラムタイトルである。さらに、28日に発表の世界ランキングで日本勢男女最高の1位になる。
うちの患者さんのK子さん。脳腫瘍の放射線治療で入院中のお父さんの世話のため、仕事の合間を縫っての病院通いで、疲労困憊の状態にある。
<お父さんの具合はどうですか?>と訊くと、「昨日行ったら、大坂なおみはすごいな、お前は観てるのか、なんてのんきなこと言ってるんです。こっちは心配ばかりしてボロボロで、腹が立ったけど、少し安心しました」と言って笑った。こんなところで、大坂なおみが登場して、父と娘の間の緩衝役を担ってくれているんだなと思いました。
おじいちゃん先生は、近年、女子テニスを観ることがほとんどなくなっていました。肉体的にも技術的にも衰えているS・ウイリアムズを、いつまでたっても打ち負かすことができない女子テニス界の状況をつまらなく思っていたからです。
ところが、K子さんのお父さんも感心した、“すごい大坂なおみ”が出てきてからは、俄然テレビにくぎ付けになっています(日本人選手だからということも、もちろんありますが)。
土曜日の診療を終えて急いで自宅に帰ると、決勝戦が始まる時間に何とか間に合い、晩御飯はお預けにして、全球を生で観戦することができました。
“すごい大坂なおみ”は、サービス力、レシーブ力、フットワークなど、往年のS・ウイリアムズをすでに上回っていると思います。今後、ボレー、スライスストロークなどの技術や戦術面の上達が加われば、とんでもない選手になりそうです。
試合直後や、優勝セレモニー、メディアインタビューにおいて、浮かぬ顔をして素直に喜んでいないような大坂選手のことが、ちょっと気になりましたが、おそらくは、精神的にも肉体的にも消耗していて、その元気すら残っていなかったのかもしれません。それとも体調でも悪かったのか?(メルボルンの酷暑や極度の緊張で)。しかし、それらを乗り越え、完全燃焼できる彼女の才能は素晴らしいものだと思います。つぎの全仏オープン(5月)が今から待ち遠しくなってきましたね。
補足:後日、ある新聞記事に、「・・・最終セットに入ると、感情表現の豊かな普段の大坂選手とは別人のように、(無表情で)淡々とプレーを続けた。試合後の本人の弁によれば、『空洞だった。ロボットみたいに命令を実行していただけ』・・・」というのがあった。これはまさしく、大坂なおみが試合の中で初めて体験した“無我の境地”を、大坂なおみ流に表現した言葉なのではないだろうか。無我の境地に立てたからこそ、感情が入り込まず、思考も経由しないでボールを打ち続けることができ、結果として勝利を獲得できたのだと思います。